そんな中、短期で勝負を決めなければならない一年戦争緒戦の度重なる作戦失敗で、想定していたプランは崩れ、戦争は長期化する運びとなりました。
これにより、苦しい国家運営を強いられる事になったジオン公国ですが、そんな中でも更に独自で個別の高性能モビルスーツ開発を続行します。
苦しい国家運営の中でも 特に資金を必要とする兵器開発に力を入れ続けたジオン公国軍。
そうせねばならなかった理由とは、どの様な物なのでしょうか?
目次
ジオンの強みと連邦のバックグランド
ベンチャー企業が大手企業を驚かせる様な物を開発し、その技術が注目される事はよくあります。
これは、資金力や資本に劣る中小企業が、大手企業に勝てる可能性がある「特出したアイディア」等で勝負を挑もうとするからです。
逆に言うとベンチャー企業は「特出したアイディア」等の独自の強みがなければ、経済社会の競争の中で優位性を保つ事が出来ません。
ジオン公国軍の立場と追随する連邦の技術
ジオン公国は 戦争という競い合いの中、1/30しか国力が無い現実から「アイディア」とそれを基にした技術で勝負する道しか残されていませんでした。
この事で、ミノフスキー技術を用いた兵器開発と、その「質」を高める以外、地球連邦政府に対して打ち勝つ手段が見当たらなかったのです。
上記の事を追及し成功した事例が、一年戦争緒戦の主役であった「MS-06 ザクⅡ」です。
モビルスーツは今までのどのカテゴリーにも当てはまらない新兵器として実戦投入され、地球連邦の度肝を抜く圧倒的な戦果をもたらしました。
ミノフスキー粒子の効果による隠密性と相まって、無類の汎用性と攻撃力を発揮しました。
しかし、地球連邦軍はこれをキッカケに運用を疑問視していたモビルスーツ開発に本腰を入れ、やがてV作戦が発動。
数か月の間にザクⅡと同等以上の性能を持つジムを完成・量産させてしまうのです。
莫大な資金やバックグランドを持つ地球連邦軍は、その強みを用いてジオンが開発した技術を模倣すれば、戦争という無秩序の中で同等の技術や兵器を比較的 楽に保有することが可能です。
劣勢に立ち始めたジオン公国軍の強みとは?
ジオン公国は、連邦のその強みに唯一 勝てる可能性がある「兵器の技術開発」に於いて、優位性を保ち続けれなければなりません。
すなわち、ザクⅡの様な戦局を一変させる程の画期的で新たな兵器を保有する事で、一年戦争緒戦で連邦に植え付けた脅威、トラウマや警戒心を煽り、動きを封じるのです。
これを止めてしまえば抑止力を失い、地球連邦は容易に攻め込んでくる。
他に連邦と張り合える強みが見当たらないので、模倣されると分かっていても、より差別化できる兵器の開発を行う、言い方を変えれば 開発を続けざるを得ない状況に置かれてしまっているのです。
ジオンの脅威と技術力
上記した理由を基に開発された代表的な兵器例を紹介します。
サイコミュシステムを利用したニュータイプ専用モビルアーマー
MAN-03 ブラウ・ブロ
MAN-08 エルメス
MSN-02 ジオング
圧倒的な火力やI・フィールドによる防御システム搭載のモビルアーマー
MA-05 ビグロ
MA-08 ビグ・ザム
これらが、量産ラインナップとは異なる試作・ハイエンド機として開発されました。
ジオンの強みを保ち続ける為に開発された兵器、例えばソロモン攻略戦で出現したビグ・ザムが残した爪痕や、その後の「ソロモンの亡霊」「気が付いたらやられていた」などと恐れられた、サイコミュシステムを搭載したエルメスの遠隔攻撃の脅威を見ても、ジオンの技術力が連邦を凌駕し、連邦の活動や作戦行動を妨げる抑止力となっていた事が見てとれます。
しかし、この抑止力を得る一方で、ジオンは莫大な資金を引き換えにしています。
地球連邦に比べ1/30以下の国力しか持たないジオンですが、戦いは数が重要です。
これらハイエンド機以外に、量産化された主力モビルスーツにも、莫大な費用が投下されている事を無視してはなりません。
技術競争と次期量産機に求めた高性能
ジオン公国軍はブリティッシュ作戦の作戦遂行の為に、一年戦争開戦前から主力機としてザクシリーズのみを、計3000機程 量産していました。
それに加え、作戦成功による終戦後の地球連邦統治等も見据え、更に新しい量産型モビルスーツの開発(ドムやズゴック等)を進めていましたが、戦争の短期決戦による勝利に絶対の自信を持っていた事もあり、長期的視野で見たモビルスーツの開発を行っていませんでした。
すなわち、モビルスーツ開発における優先順位はコストでは無く、「モビルスーツの性能」とされていたのです。
ジオン公国軍は、ジオニック社やツィマッド社、MIP社を始めとする重工業メーカーのそれぞれの得意分野や考え方を尊重して開発を進めさせ、量産化される機種決定においてもトライアウトを実施。
高いレベルでの技術競争を誘発させる環境を整え、狙い通りに高性能モビルスーツを獲得していきました。
しかし その反面、規格統一や互換性の考慮は二の次となり、機体個別の設計と部材が多く存在する状態で量産は進められて行きます。
戦争の長期化とコストの問題
先に述べた通り、ジオンの作戦プランは緒戦で崩れてしまい一年戦争は長期化する事になりました。
ここで問題になったのが、低い優先順位に置かれいた「コスト」です。
連邦に比べ国力が1/30以下であったジオンが、想定していない 一番避けたかった戦争の長期化を強いられる事になり、保有する機体の規格統一や互換性が極めて低い事から、機体や機種ごとのパーツ・部品等を維持管理していく事の経済的負担を、ここで初めて認識するのです。
このままでは戦うどころか、先に経済的に破たんしてしまう。
この現実を受け止めて苦し紛れに実施されたのが、連邦の地球上の拠点を奪取しならが不足している設備や資源を蓄える事が目的である「地球降下作戦」
それと もう一つ「統合整備計画」と呼ばれるものです。
発令された「統合整備計画」とは?
統合整備計画は、ギャンの搭乗者 マ・クベ少佐の発案と言われています。
マ・クベが軍事産業 各社に要求した要件は、
ザクの生産ラインで全てのモビルスーツを製造する。
と言うものでした。
つまり、各モビルスーツの構成部品などを今更ながらも統一規格化して、違うモビルスーツを同じラインで作れるようにし、生産とバリエーションに対するコストを下げようとしたのです。
統合整備計画における、主な規格統一は
- マニュピレーター(手)の規格統一
(手の形状を同じにする事により、他のモビルスーツの武器も使用できるようにする) - コックピットの規格統一
(搭乗機種が変わっても同等の操縦方法で操縦できるようにする) - 主な構成部材の規格統一
(生産部品の互換性を高め、1機当りの生産コストを下げる)
などが主な内容です。
この統合整備計画はUC0079.02に発令されましたが、設計の見直しや互換性の調整などに約4ヶ月を費やした為、その間のモビルスーツ開発は全て中止される事になりました。
その為、新型機 ゲルググも終戦直前に量産が開始される結果となり、統合整備計画で生産されたモビルスーツは活躍の場を殆ど与えられませんでした。
統合整備計画で製造された主な機体
MS-18E:ケンプファー
MS-06FZ:ザクⅡ改
MS-09R:リックドムⅡ
MS-07B:グフカスタム
MS-14F:ゲルググM
等があり、統合整備計画によって生産されたモビルスーツは目的通りコストダウンを実現した上、メンテナンス性も含め非常に高性能であったと言われています。
まとめ・考察
ジオンのモビルスーツに対する考え方と立場、それにまつわるコストの問題について記述しました。
国家として早熟であったジオン公国。
ある意味、国家としては認められてはいなかった側面もあると思いますが、国家独立し戦争に勝つという 壮大な目的と大きなリスクを抱えていたにもかかわらず、戦争プランの2の手3の手を持たなかった為、いたずらに戦争を長期化させ兵器開発に力を注いでしまいました。
各重工業メーカーの意見を尊重し高性能モビルスーツ開発の環境を整えたとの考え方もあった様ですが、見方によっては後付けの理屈に過ぎなかったのかもしれません。
地球降下作戦後、戦争膠着状態に陥りましたが(詳しくは地球降下作戦へ)、膠着状態となって両軍が行っていた事が、
- 地球連邦:V作戦によるモビルスーツと運用母艦を始めとする兵器群の充実
- ジオン公国:統合整備計画によるモビルスーツの規格統一
国力が豊かな地球連邦軍は、モビルスーツのみにこだわらず、兵器群の効率よい充実を目指し、運用母艦の開発以外に既存兵器や戦艦、戦闘艇の再建を行う「ビンソン計画」も同時に発動し、組織的な・総合的な軍備体制を構築していきました。
また、モビルスーツの開発に於いても、ジムを基本とした機種とバリエーション開発に留まっており、生産効率も互換性も非常に高い状態で量産化されていきました。
一方のジオンは、モビルスーツの統合計画のみに特化し、組織として戦える軍備体制充実に至るまでの余力は残っていません。
これらの事から、短期決戦で戦争を決めきれなかったジオンの敗北は明白であり、それでも突っ張ってしまったジオンは沢山の命を奪う悲惨な泥試合を強いていく事になるのです。
勝つ宿命を背負わされたジオン公国民。
その上で戦争を眺めるギレン総帥。
この頃になれば戦争の動機である「宇宙移民者の主権独立」は忘れ去られ、独裁と国家中枢(ザビ家)の不仲は、国家としての意義を見失っているのです。
一年戦争の悲惨さを増長させたジオンのプランニングの甘さ。
ガンダムは空想アニメですが、色々な事を考えさせられる優れた作品だなと改めて感じます。
すいません。
以上、余談でした~。
統合整備計画・・・
ガンダムとは近未来の物語ですよね?
大量生産の勃興から第二次世界大戦の兵器生産あたりで、部品の共通化はすでに生産の課題と捉えられていました。複数の軍事メーカーを競合させていた一面もあるでしょうけど、同一メーカーで途中から統一規格の話が出るなどあり得ません。近未来なら特にです。
私はある製造装置(ウン十億円規模です)の製造に携わっていますが、技術革新が早い分野ですら立ち上げから規格統一を念頭に置いています。規格統一は時間を節約できるからです。時間とはコストと同義ですし、製造業では常識です。結果として新規パーツが増えるのは革新部分に対応できないからで、ここでいうMSが同一パーツで製造できないのは当然です。
統合整備計画とはマイナーチェンジ(性能向上が前提との観点から)のように感じますが、それで済むならなぜ新機種がすでに製造されているのか辻褄が合いませんね。あり得ません。
0080でしたか、物語性は存じ上げないので否定しませんが、オリジナルと同じ時間軸で「兵器」を考えると完全な失敗作だと思います。
あまり関係のない話かもしれませんが。。。
デザインを探求していくと、デザイナーの癖みたいなものが見えてきます。大河原さんがデザインされたものの特徴と出渕さんの特徴の差は顕著ですよね。腕の長さが決定的な違いでしょうか。同一メカをリファインしたことが失敗(時代考証的な、という意味で)でしたね。一方で物語の内容としては、産業メーカーの競合で多種展開したと定義すると、大河原さんが全てデザインしたために似通ってしまうんですよね。ガンダムもザクも腕のバランスが一緒。現実世界では理想の体型は個人差があるのに、です。
デザインリファインの面からは「現代風」とした出渕デザインでなくても、MGザク2.0みたいに充分現代に耐え得るデザインになるんですよね。ザク改はいらない。ポケ戦では全く新たなメカで話を展開すれば良かったのにな、と考えてしまいます。アレックスも理論的には超駄作なので、ガンダムに加えて欲しくないです。
兼業主婦さん
コメントありがとうございます。
造形と機能を考えると、デザイナーが一緒だと確かに偏るでしょうねー。
ただ、コメントを見て思ったのが、確かにザク改って立ち位置中途半端ですね。。
統合整備計画で生み出された汎用機。
その割には出番無さすぎですね。
ケンプファーは秀逸なデザインで好きですが。
デザインの話になると、永野護さんが個人的に好きです。
ハンムラビは好きじゃないけど、独特の曲線の女性のようなフォルムがたまりません。
ブラックグラード 好きです。
すんません。話がズレちゃいました。。