マチルダ中尉は、地球に降下したホワイトベースに対し、軍務ではありますが危険を顧みず複数回接触しています。
補給や物資を届ける目的がありましたが、それとは別に、ガンダムの「戦闘データを持ち帰る」と言う大切な任務も担っていました。
ガンダムの戦闘データは、後の地球連邦軍モビルスーツ量産に対し大きな影響を与えるのですが、では、その「戦闘データ」の内容とは一体、どの様な物なのでしょうか?
モビルスーツの動かし方。初期プラン
一年戦争開戦の8年前。
ジオン公国軍は、今までのどの兵器カテゴリーにも当てはまらない人型機動兵器「モビルスーツ」の開発に着手しましたが、この人型で関節があり、2足歩行する「複雑な機械」とも呼べる兵器をどうやって動かすか?
当初はモーションキャプチャなどの方法も模索されたようです。
しかし、モビルスーツ内に人が飛んだり跳ねたりアクションしたりするスペースの確保と、パイロットの体の固定方法や、体格の差によって起こりえる機体とのミスマッチなどの課題が色とりどり並んでしまったので、この案は早い段階で却下されました。
そこで次に出た案が旧兵器同様、コックピットとレバーやボタン、ペダルにより基本操作を行い、それに自動制御オペレーションシステムを組む込む事で、ある程度動きを自動化させると言う方法です。
例えば「走る」という操作についてコマンドを指定すれば、各関節を自動でコンピューターが制御して動かしてくれる仕組みです。
ジオン公国軍はこの考えを基に自動制御オペレーションシステムの開発に着手します。
ジオン公国軍の制御システム
ジオン公国軍のオペレーションシステムは、想定されるいくつかの動きをプログラミングして、それを組み合わせることによって動かします。
例えば、「走りながらマシンガンを撃つ」という操作をするならば、コンピューターが「走る」コマンドと「マシンガンを撃つ」コマンドを選択して、それを組み合わせてひとつの動きとします。
- コマンドA=走る
- コマンドB=マシンガンを撃つ
- A+B=走りながらマシンガンを撃つ
となります。
地球連邦軍の制御システム
地球連邦のオペレーションシステムは、教育型コンピューターと言われ、想定されたいくつかの動きをプログラミングして、それを組み合わせることによって動かします。
ここまでは、ジオンのオペレーションシステムと同じですが、ここらがジオンと差が出る部分。
組み合わせた動きはひとつのコマンドとして自動登録し、データを蓄積します。
例えば「走りながらビームライフルを撃つ」という操作をするならば、ジオンと同じくコマンドAとコマンドBを選択し、その後、それをコマンドABとして登録し蓄積するのです。
- コマンドA=走る
- コマンドB=ビームライフルを撃つ
- A+B=コマンドAB・走りながらビームライフルを撃つ
この「コマンドAB」がデータベースに登録されます。
これにより、今後は「走りながらビームライフルを撃つ」動作について、直接コマンドABを指示します。
この事で処理速度が向上し、レスポンスが良くなる事や、このコマンドがABCDE・・・・と無数に新しいコマンドが蓄積されていき、更にその新しいコマンドと新しいコマンド同士が組み合わさって新しいコマンドが蓄積されていきます。
従って、色々な動きをすればする程 素早くしなやかな動きを行う事が出来る様になるのです。
教育型・推論型コンピューター
ガンダムを初めとする試作機のRXシリーズは、上記した「教育型コンピューター」が内蔵されています。
また、このコンピューターは「推論型コンピューター」とも呼ばれることがあります。
これは、パイロットがコマンドに無い動きをすると思われる場合、コンピューターが既存にあるコマンドから近似のコマンドを抽出して提案し、それが実行に移されたらデータベースへ蓄積される為です。
言い換えれば、未熟なパイロットであっても「こうしたい」とか「こうならないか」をコンピュータが推論してサポートできるのです。
このフィードバックは全てアムロとガンダムによる戦闘データによるもの。
幾多の戦いの中で、パイロットをサポートできるたくさんの引き出しをコンピューターが保有している訳であり、如何に必要不可欠で流出させてはならない貴重なデータであったかが うかがい知れます。
そのため、RXシリーズはコアブロックシステムを採用していますが、これは機体が破壊され動かなくなっても蓄積されたデータだけは持ち帰れるようにするバックアップツールみたいな物です。
データの回収。マチルダさん。
これらのデータを持ち帰ることがマチルダさんの使命。
通信で送信すればイイのでハ?
という考え方もあるでしょうが、ミノフスキー粒子散布下では通信も安定しません。
もし、仮に通信環境が良くなり送信できたとしても、ジオンにとっても通信環境が整っている事でもあり、貴重なデータを流出させてしまう可能性があります。
ジムの量産を控えていた地球連邦にとって、この戦闘データは最高機密であり、このデータを基にロールアウトされたジムは、アムロが幾多の戦いで作り出した動きが出来るようにっているので、理論上、スペックでも引けをとらないジムはガンダムと同等程度の戦闘力を身に着けて量産された事になります。
また、パイロットを教育する期間を設ける事も困難でしたが、地球連邦のモビルスーツは戦闘機のコックピットを流用して作ってある事と、このコンピューターのサポート能力が高かった事で、訓練に要する時間を大幅に短縮する事に成功しています。
まとめ・考察
モビルスーツのオペレーションシステムについて記述しました。
ジオン公国軍が開発したこのシステムは
AMC(アクティブ・ミッション・コントロール)
と呼ばれ、ザク等の主力モビルスーツに搭載されていきました。
一方の地球連邦は、その技術を参考とし開発したシステムが
ICN(推論型ナビゲーション・コントロール)
と言うもので、ジオンと比べ後発である地球連邦軍は技術開発において、それを凌駕しようとしました。
AMCは、考えられる動作を一つ一つプログラミングしなくてはならないのでバージョンアップが戦闘ごとに繰り返されていき、一定の動きを獲得するのに、労力や時間を多く必要とするシステムとなってしまいましたが、やがて地球連邦が開発したICNに近いシステム
AAMC(アドバンスド・アクティブ・ミッション・コントロール)
を開発し、ドム以降の機体に搭載していきます。
ジオン公国軍は、モビルスーツの技術競争を視野にいれていて複数の企業にモビルスーツを開発させ競い合わせていました。
それにより、高性能なモビルスーツを開発する土壌を作ろうとしていたのです。
しかし、構造も基本設計も何もかもが異なる企業別のモビルスーツそれぞれにAMCの設定を行う事になります。
機種が増えれば増えるほどその開発する労力は増す事から、統合整備計画発動後にAAMCに移行していったようです。
モビルスーツ開発のパイオニアであったジオンの試行錯誤が見え隠れするこのオペレーションシステム開発事情ですが、地球連邦軍は数ヶ月という極めて短い期間に効率的にモビルスーツを量産に漕ぎ着けた理由がここに隠されています。
連邦 頑張ったネ!
すいません。
以上、余談でしたー。
危険を顧みズ、ホワイトベースに補給活動を行っていたマチルダ中尉ダヨ