ジオン公国軍は、ブリティッシュ作戦のターゲットを南米ジャブローとしました。
3,000万tを超えるスペースコロニーをターゲットに向け投下。
地球連邦の軍事中枢を破壊し、一気に戦争に終止符を打つ。
一般的に知られているジオン公国軍の作戦プランです。
しかし、ジオンに比べ30倍の国力を持つ地球連邦は、中枢とは言え、その1点の攻略により 果たしてもろくも崩れてしまう脆弱な国家なのでしょうか?
一方のジオンは、宇宙からの間接攻撃によるジャブローの壊滅のみで、本当に戦争に終止符を打てると考えていたのでしょうか?
ジオンの一年戦争緒戦を検証してみます。
地球連邦政府と地球連邦軍
劇中では地球連邦政府も地球連邦軍も 総じて「地球連邦」と称されていますね。
- 政治を司り、宇宙移民計画等を推進し運営しているのが「政府」
- 宇宙移民計画の反発を抑えたり、統治するのが「軍」
基本的に「軍」は政治的な機能の一つであり、「政府」の下に位置付けられています。
そんな中、ジオン公国は「軍」の中枢機関で、地下に構築された巨大な要塞「ジャブロー」をターゲットとしました。
ジャブローはその隠密な立地により内部詳細が掴めず、ジオンからしてみれば政治を含めた国家の高いレベルのハンドリングが行われていたと認識していたのかもしれません。
ジャブローさえ攻略してしまえば。
しかし 地球連邦にはジャブロー以外に、下図の様な軍事拠点が複数あります。
統一国家になる前の各国の軍事的基地・拠点は地球連邦に引き継がれ、世界中に点在しています。
また地球連邦軍は、旧アメリカ軍の組織や要衝をベースに構築されている為、キャルフォルニアベースに代表される北米に点在する基地や施設は、総合するとジャブローに匹敵する。
もしくはそれ以上の能力を持ち得ます。
北米地区の主な地球連邦拠点。
この他にも沢山の基地が点在しています。
現にジオンが実施した地球降下作戦では、この北米地区を制圧。
- キャルフォルニアベースを奪取し、モビルスーツを始めとする兵器の一大生産拠点とした。
- ニューヤークに地球方面軍司令部を置き、ガルマ・ザビ大佐を駐留させた。
- 穀倉地帯の奪取による食料の確保。
地球上での活動拠点とすべく、制圧して体制をしっかりと構築する事ができています。
この事を考えると、地球連邦はジャブローを失っても体制を立て直せる余力が残されており、ジオンはジャブローを壊滅させただけで諸手を挙げて「勝利!」と言える状況では無いのではないか?
地球連邦に比べ国力が1/30であるがこそ、短期で確実な詰めを施し「勝利」を確定さなくては 一つのほころびで形成の逆転を許してしまい、敗北へ突き進む事になります。
ブリティッシュ作戦 勝利のシナリオ
では、ジオンが当初 思い描いたブリティッシュ作戦成功による勝利のシナリオとは、どの様な物なのでしょうか?
ガンダム入門塾 独自の推察とストーリーをまとめてみます。
1st STEP
- 宣戦布告後、ブリティッシュ作戦の実行
- スペースコロニー奪取後、ジャブローへの落下軌道に乗せる。
ここまではオリジナルストーリーと同じですが、ここから違いが出ます。
- ジャブローにコロニーが落下し、基地は壊滅。
- 制圧したグラナダ以外の月面都市の制圧を開始。
- 残存する連邦宇宙軍のせん滅。
- 各サイドの統治行動を開始。
ジャブローの壊滅で連邦が混乱している中、先ずは、地球に対する制空権を確実な物とします。
月面都市は地球連邦にとって玄関口の様な物で、「出入り口を塞ぐ」と言う意味を持ち、また宇宙軍のせん滅は、ブリティッシュ作戦の様にスペースコロニーを奪取して移動させると言う大仕事がありません。
そのため、モビルスーツの圧倒的な攻撃力はせん滅のみに向けられる事になり、ミノフスキー粒子の効果も相まって容易に遂行できる事柄だと考えられます。
そして各サイドにけん制を掛けつつ、宇宙での体制を整えて次の行動に移ります。
2nd STEP
- 壊滅したサイド2のコロニー群から、比較的健全なコロニーを地球周回軌道に乗せる。
- 地球連邦に対し、和平交渉の持ちかけ。
ここからが詰めの段階に入ります。
和平交渉とは言え、降伏させる事が目的です。
確実な降伏を勝ち取る為に、スペースコロニーを地球周回軌道上に置いておくのです。
……んん?
どういう事か?? と言うと、
要は、ジャブローの運命をいつでも再現できるコロニー落としの「スタンバイ」状態にしておくのです。
直径6㎞、長さ40㎞にも及ぶスペースコロニーが地球周回軌道上に有れば、地上から肉眼でハッキリと見える筈です。
周回軌道上にあるという事は「いつでも落とせますよー。」と言う意味で、となれば、恐怖・けん制・抑止 等々、色々な意味を持ちます。
あえて北米上空を周回する軌道に乗せます。
こわいですねぇ。。
ここで和平交渉を持ち掛ければ「YES」と言わざるを得ない。
「NO」は頭上のコロニーが落下するという意味を持ちます。
3rd STEP
- 地球制圧部隊の降下。
- 主要拠点の奪取と武装解除。
- 連邦政府要人の拘束。
ここから宇宙からの間接的関与では無く、直接的・物理的な制圧活動に移行していきます。
先に述べたニューヤークやキャルフォルニア等の拠点を次々と支配下に置いて武装解除。
また、色々な理由をつけて連邦政府要人や運営に携わる影響力のある人々を拘束して民衆から隔離します。
これでジオンは戦争に完全勝利!
目的であった短期決戦を完結させる事ができます。
しかし、ジオンは仮にこのプランを立案していたとして、結果 一年戦争の大事な初戦であるブリティッシュ作戦は失敗に終わりました。
絶対に負ける事が許されないジオン公国は、果たして このプランが失敗した時のサブプラン、リカバリープラン等を準備していたのでしょうか?
答えはNOです。
ブリティッシュ作戦の成功に絶対の自信があったのだとガンダム入門塾では考えています。
戦争勝利後のジオン
ブリティッシュ作戦が成功していれば、ジオンは戦争に終止符を打つ事が出来ます。
宣戦布告の目的であった宇宙移民者の自治権の獲得はもちろんの事、地球連邦をも支配下に置いて地球圏全体を統治する流れとなるのです。
しかし 目的を成就したところで、果たして平和は訪れるのでしょうか?
勝利した瞬間、ザビ家を始めとする宇宙移民者達は、ジオニズムの成り立ちや団結を生む大きな動力源であった、地球連邦という「共通の敵」を失った事になります。
この事で、あたかも「くさび」が外れたかの様に、民意のベクトルが合わなくなる様な気がするのです。
一つの国家となり、敵や競争する相手が居なくなった時、人の本能や国家の成り立ちは、歴史を繰り返し再び新たな戦乱を引き起こすのでは無いのか?
ジオンが戦争に勝利した所で、所詮は地球連邦政府が樹立された後の運営形態と何も変わらぬ状態が生まれるのだと思います。
そんな中、ギレン総帥は戦争のプロパガンダとして用いたニュータイプの考え方を飛躍させた「優性人類生存説」を現実の物とするのでしょうか?
「サイド3の民こそが選ばれた優性人類であり、オールドタイプは粛清する。」
この様な火種で、新しい戦乱が起こるかも知れませんね。
まとめ・考察
もしもストーリー、
「ブリティッシュ作戦が成功していたら」
を勝手に想像して書いてみました。
ザビ家が地球圏を支配した時、困ってしまうのがシャア(キャスバル)です。
なぜなら、戦争のドサクサに紛れて父殺しの仇、ザビ家に復讐すると言うオリジナルストーリーにもある活動が出来なくなってしまうからです。
公約通り、ギレン総帥は戦争に勝利し宇宙移民者の自治権を獲得したので「神」の様に崇め奉られてしまい、シャアの立場では手も足も出せない存在になるのだと考えられます。
もし、ここでギレン総帥が「優性人類生存説」を現実化する活動に出たら、その暴走を止めるべく、ダイクンの実子であるシャアが「キャスバル」として台頭するのか?
キャスバルとアルテイシア(セイラ)が、その正当な血筋を基に、ダイクンの思想や真のニュータイプを唱え、強大な仇「ザビ家」に反旗を翻し共闘するのか?
ギレン総帥が烙印を押した「オールドタイプ」達を引き連れた2人のニュータイプの物語。
なーんてストーリーも面白そうですね。
このストーリーは地球を周回するスペースコロニーに、拘束した連邦政府要人達を連行するところから始まります。。
( ゚Д゚)….すいません。
以上、余談でした~。
楽しく読ませていただきました。
シャアは作戦が成功すると困ることがわかってたから、落下地点をずらすための策略を練って密かに実行してたんじゃないですかね?
しなキャットさん
コメントありがとうございます。
シャアはドサクサに紛れないと活動できない環境でしたから、確かにその考えは一理ありますねー。
ORIGINでは、ルウムのテキサスコロニーを攻撃させないようにしたのはシャア自身だと言っていましたし、このような指揮権を基に、前線で出来る策略を折り込んだと言う設定も面白いと思います。
んー。具体的に言うと何が考えられるかなぁ。
このコメントを見てくださっている皆さんのご意見も聞いてみたいですねー。
ジャブローに当たらなくても、威嚇には充分だったはず。
後は、ルナツーさえ攻略してしまえば、小惑星を降伏まで落とし続けるだけの簡単なお仕事。
ヒトラーのしっぽさん
コメントありがとうございます。
ジャブローに当たらなくても、十分な効果だったでしょうね。
あとは先ず制空権を握って、敵本陣が活きている事に対し、どの様な手段をとっていくか。
制空権を取っているだけでもかなりのイニシアティブを握っていると思われるので、地球の汚染を最小限に抑えつつ、質量兵器でやはりジャブローの壊滅を目指すべきなのでしょうか?
国力の差を考えると、この状態でも戦争膠着状態に陥って、小国ジオンは持久力が持たない可能性もありますね。
でも、あわてて地球降下作戦を実施するのはNGだと思います。
南極での会談で
1・衛星ミサイルやコロニー改造部隊の写真や試料を見せた上で、条約を破る準備はいつでもできていると脅す。
2・ルウム戦役までに宇宙艦隊を消耗し尽くした連邦軍との間で相互確証破壊体制を築き戦争状態を中断させる。
3・その後、戦争状態再開をちらつかせ宇宙艦隊の再建や経済制裁、航路封鎖政策をやめさせる。
ななしさん
コメントありがとうございます。
仰る通り、この状況下で色々な条件を付けることができる優位性を活かせるかがカギですよね。
条件を取る前に係戦状態に持って行ったので、よっぽど情報分析が出来ていなかったのか?!
国家元首の失敗は死に直結するので、リアリティを求めるならば、ななしさんが仰るような駆け引きの場面は見てみたかったですねー