ドムの開発コンセプト
重力下に於けるモビルスーツ運用の弱点は、その自重により移動性能が著しく低下してしまう事にあります。
しかし、他の兵器にはないモビルスーツ独自の万能性や汎用能力は、重力下で活用したい重要な強味でもあります。
重力下に於ける移動性能の克服。
この一点に的を絞り開発されたのが、MS-09 ドムで、ザクやグフに代わる主力機として量産化されました。
ヒット・アンド・アウェイ
接近戦に特化されたMS-07 グフの欠点は、
敵に近づかなければ攻撃できない。
事です。
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敵に近づくと言うことは、死傷・大破率が上がると言う意味を持ちます。
ただでさえジオン公国は国力が乏しかったので、人も兵器も極力 失いたくは無い。
軍の運営に直結し兼ねないこの問題は、直ちに改善を余儀なくされる課題となりました。
そこで、新たなモビルスーツの運用案として、
- 相手敵陣に高速で近づく。
- 攻撃を加える。
- 一目散に逃げる。
相手に的を絞らせない程の移動性能を付加し、ヒット・アンド・アウェイ攻撃を想定した「ドム」が、ザクやグフに変わる主力モビルスーツとしてプランされます。
ドムの大重量はビーム兵器開発の遅れ
ドムはホバーリングによる浮遊移動を主体として設計され、移動速度はMAX380kmを超える性能を目指し開発は進められていきます。
その目的に対し、障害となってしまうのが防御に必要である「盾」の装備で、空気抵抗を受けた時のバランスの調整が整わなかった事から、代わりに装甲材を増強する案が採用されました。
「高い移動性能を獲得する」という目的は不変なので、この装甲材の問題は「機体の重量が増す」という、目的に対し あべこべな設計条件となってしまい、技術者達を悩ませる要因となってしまいます。
また、物理的重量を大幅に低減できるビーム兵器の開発が追いつかなかった為、高速移動しながらでもダメージを与えられる可能性が高い、360mm大口径バズーカを基本武装としました。
ドムが装備するジャイアント・バズ
大口径なだけに、大きく重たい装備です。
これら 装甲と装備の問題で、機体の重量はフル装備で80t近くになってしまい、大重量でありながら高速移動。
結果的に、とてもバランスの悪い機体となってしまったのです。
ドムの装備と攻撃のバリエーション
ヒット・アンド・アウェイ攻撃を主体としたドム。
その攻撃を行い、ジャイアント・バズを使い果たした後の装備を観てみると、
- ヒートサーベル
- 胸部メガ粒子砲
これらの基本装備が残っています。
ヒートサーベルはビーム兵器ではないので威力は低く、また、接近戦用の装備ですのでドムの運用コンセプトの補助的装備に位置づけされます。
デも、メガ粒子砲を装備してル!
とありますが、これは目くらまし程度の威力で致命傷を与えるようなものではありません。
黒い三連星がジェットストリームアタックを仕掛ける際にガンダムに向けて使った描写がありますが、かく乱する一つの手段として使われているに過ぎませんでした。
【動画】胸部メガ粒子砲 使用例ダヨ(ジェットストリームアタック時)
機体がダメージを受けた様子は見受けられないですね。
この様に、ジャイアント・バズを打ち終わったら、その他の装備品による攻撃の選択肢が少なく、攻撃力が格段に低下してしまうのです。
この為、ヒット・アンド・アウェイ攻撃に特化した機体と言っても過言ではありません。
引き継がれるドムの基本構造
当時、画期的なホバーリングシステムを搭載したドム。
しかし上記の通り、問題点や課題が色々と並んでしまったので、当然のことながらそれらを改善したモビルスーツ「ゲルググ」が後に開発される事になります。
ただ、ドムの下半身の高速移動に適した、通称「スカート」と呼ばれる設計構造は後のモビルスーツ開発に広く応用されていきました。
一年戦争が終了した後の 星の屑作戦で運用された ドム・トローペンや ガンダムZZに登場する ドワッジ、ドライセンなどにも引き継がれ、重力下仕様機には、ほぼ標準装備化されていったのです。
AMX-009ドライセン
後のネオ・ジオンが開発した機体ですが、随所にドムの特徴が見られます
あまり良いところが無かったドムですが、後のジオン系モビルスーツには何かしらドムの面影が残っており、基本構造を決定付けた大きな意味合いを持つ機体と言っても過言ではないのです。
まとめ・考察
MS-09 ドムについて記述しました。
ドムが配備され始めた0079.10下旬は、地球連邦軍のモビルスーツ量産は始まったばかりの頃でした。
ジオンとしては連邦のモビルスーツ開発が本格化し、同等のモビルスーツを所有される前に、更に革新的な技術を導入したモビルスーツを開発しておかなくては、国力を含め莫大なバックグラウンドを持つ地球連邦に簡単にその技術が模倣され追い付かれてしまいます。
ドムの開発目的はモビルスーツの高速移動。
やりたい事は単純ですが、それが故に補ったり 誤魔化したりする要素が無く、ドムもグフ同様、ジオンの高性能モビルスーツ開発に於いて その難しさや模索の形が色濃く出た機体と言えます。
でも、実はこのドムMS-09の前の型式、
MS-08「イフリート」という機体が存在します。
MS-08 イフリート
ジャイアント・バズの装備も可能で、複数の接近戦用の武装も施されています。
型式を見てもMS-07グフとMS-09ドムの中間に当たる機体で、性能面でもそれらの中間的なものを持ち合わせています。
高機動でありながら特に接近戦を得意とし、その性能はグフを上回ると言われ、とてもバランスの取れた優れた機体です。
ゲルググが開発される前の地上でのモビルスーツ配備は、このイフリートが一番適しているのではないでしょうか。
なぜならドムやグフは、その性能が偏り過ぎて元々備わっている万能性と汎用能力を引き出せておらず、使える局面が限定的になっているからです。
それを踏まえ、ジオンの地球侵攻部隊がイフリートを独自に開発したとされていますが、やはりドムとグフの偏った性能に苦慮した結果がこの中間的な性能を持つ機体に踏襲されている様に見えます。
しかし、地球連邦のオデッサ作戦が成功し、主戦場は宇宙へ移行していった為、イフリートの改良や量産には目を向けられず、8機程度生産されるに留まった様です。
ちなみにイフリートとは、魔人、悪魔、精霊などの意味があり、イフリートに搭載された「EXAMシステム」はそれを描写するかの様ですね。
すんません。
以上 余談でした~。
実質的なアップデート機のドム・トローペンでは、予備の弾や補助武器を括り付けられるようなラッチが増えているのを見ると、実際に継戦能力の低さが問題視されていたということでしょうか。
とはいえ、フル装備すると更に重たくなった機体を無理矢理振り回して暴れる格好になってしまいますが…
名無しの一般兵さん
コメントありがとうございます。
ドムの基本設計と思想「重いけど速い」が変わらない限り、性能的にはアップデートの域を出ないと考えます。
トローペンはMS-09より軽くなっていると言う設定らしいですが、ご指摘の通り継戦能力を補う為、装備が重くなってしまいます。
個人的には「ドム」とは武装をビーム化しなくてはならない事を浮き彫りにした機体だと考えていて、この事でゲルググが開発されたのですね。
これまでジオン軍のMSはザク→グフ→ドムとパワーアップしていったのだと思ってましたが、
ザクに代わる陸戦MSとしてグフとドムはほぼ同時に走っていて、成功したのが後発のドムって感じなんでしょうかね。
面白い記事でした。
メイスンさん
コメントありがとうございます。
面白いとの評価。
たいへんうれしく思います。
モチベーションあがりますぅ~。
しかし、メイスンさんのおっしゃる通り、ザク→グフ→ドムとパワーアップした事には間違いありません。
ただ、ジオンが熟考して開発を行う時間的環境が無かったのがグフとドムに見られる性能の偏りだと考えています。
すぐれたパイロットであればそれなりの活躍を見せた様ですが、なかなかそう言う訳にも。。
ザクからゲルググへ一気に開発が進めば良かったのになー。
ドムのように標準兵装がバズーカ(というよりロケット砲?)の場合、
装弾数の少なさが問題となりそうです。
その割に予備弾倉を携行している描写が少なく、
何をしたいMSなのかよく分かりません。
ホバークラフトをオフして格闘戦はできそうにないですし、
オンの状態で剣を振り回すなどもあり得ないでしょう。
難問さん
コメントありがとうございます。
返信が遅くなってスイマセン。。
ザクⅡ以降、ゲルググまでのモビルスーツは、性能が偏り過ぎています。
完成度が高く、汎用性の高かったザクシリーズは、基本スペックの低さから改良を余儀なくされますが、それを受けてのモビルスーツ開発は、すこしお金の使い方が勿体ないですよね。
ドムは量産するような性能でもなく、その偏った性能のテスト機レベルに近いのかなと考えています。
重いのに早くて軽装で継戦能力が低い。
補給を受けられない戦況下では、運用はかなり難しかったと推測できますね。