ジオン公国軍は戦争の切り札として、今までのどのカテゴリにも当てはまらない新兵器「モビルスーツ」を開発し、それにより一年戦争緒戦で圧倒的な威力を発揮し地球連邦を追い詰めました。
しかし、戦争は長期化し地球連邦軍も同等の兵器を保有するようになり、それに伴ってジオン公国軍のモビルスーツに性能の変化が見られるようになってきます。
敵の変化に併せてモビルスーツの性能が移り変わっていく流れとはどの様な物なのでしょうか?
目次
ジオン公国軍のモビルスーツ開発プラン
ジオン公国軍はブリティッシュ作戦でもその意図がみてとれる様に、新兵器モビルスーツの圧倒的な戦闘能力によって短期間で戦争を終結させようと考えていました。
短期間で戦争を終結させるという事は、地球連邦軍がモビルスーツを保有する前に決着をつけるという意味で、その時の地球連邦軍が保有する主な兵器は、
マゼラン・サラミス等の
「戦艦」「巡洋艦」
セイバーフィッシュ・パブリク等の
「戦闘艇」
等です。
モビルスーツの性能は、これらの旧式とも言える兵器に対しての優位性を保てれば良かった訳ですから、モビルスーツの開発段階において「モビルスーツ vs モビルスーツ」による戦闘能力を付加する事は想定に入っていませんでした。
MS-05 ザクⅠの能力
MS-05ザクⅠは、ジオン公国軍が初めて量産を成功させたモビルスーツです。
装備を見てみると、シールド(盾)を装備していませんし、肩のスパイクアーマーもありません。
この機体は、「対モビルスーツとの戦闘」は想定されておらず、拠点を制圧する時の攻撃能力と作業機械を兼ね備える程度の性能と装備で良しとされていたのです。
人型である事での万能性を求めたもので、見ての通り肩のスパイクアーマー等が装備されていません。
ザクⅠは、携帯できるヒートホークを所持したり、ザクマシンガン等を装備して状況に応じて武器を使い分けていました。
しかし基本設計が先に述べた通りですので、多少のマイナーカスタムで性能を上げる以外は、設計を見直すしかありません。
盾とスパイクアーマーが一体化した武装を施した例。
基本性能は上げられないので、この様な装備で不足する攻撃力や防御力等を補ったりしていました。
ザクⅠを簡単に言うと「攻撃型拠点制圧用建設機械」と言ったところでしょうか。
MS-06C ザクⅡC型の能力
ザクⅡはザクⅠの稼働時間の短さや、基本性能の向上を目指し設計が一部見直された機体です。
ザクⅡの「C型」と呼ばれる機体は、MS-06Aと言う試験的に少数量産されたザクⅡの後に量産されたものです。
この時 ジオン公国の戦争プランは、ブリティッシュ作戦により一気に戦争を決着させる事でしたので、そのプランに則り、スペースコロニーや戦艦等を短時間で破壊できる核兵器を装備する事が可能な仕様となっていました。
このタイプのザクⅡは「MS-06C・初期量産型」とされ、コクピット周辺には放射線遮蔽液が注入されていて、その影響で総重量は70tを超えていました。
核バズーカーが装備されたC型
重量がある分 機動力が損なわれますが、作戦は奇襲攻撃に近いものでしたので作戦用途にはマッチングしています。
簡単に言うと「核武装した歩兵」であり、この時も対モビルスーツとの格闘を想定した性能を獲得していません。
MS-06F ザクⅡF型の能力
ジオン公国軍はブリティッシュ作戦を失敗し、その後の南極条約により戦争は長期化する事になりました。
また、同時に核兵器の使用が禁じられてしまいます。
その為、初期量産型の上記「C型」の核装備は不要になります。
南極条約以降のザクⅡはこの核装備を排除し、今後の地球連邦が保有するかもしれないモビルスーツを意識して量産されたもので、このタイプの機体を「F型」と言います。
動力パイプを露出させる事で放熱性を向上しています。
その他ジェネレーターの出力UPなど随所に手が加えられています。
この事で総重量が56t程度までに軽減した分 機動力が増し、ザクマシンガンやヒートホークなど近接接近戦などを意識した装備が施されます。
ヒートホーク
いわゆる「闘斧」です。
このF型が最もポピュラーなザクⅡであり、モビルスーツの万能性が総合的に向上した機体です。
宇宙空間はもちろんですが、その後の地球降下作戦等の重力下でも多く運用されました。
簡単に言うと「万能型歩兵」で、装備する武装により従来通りの戦艦や戦闘艇に対する攻撃力はもちろん、今後予測される対モビルスーツとの格闘などを想定した性能を有しています。
MS-06J ザクⅡJ型の能力
戦争が長期化する事になり、ジオン公国軍は地球降下作戦によって地球侵攻を開始します。
この機体は、MS-06F ザクⅡF型の宇宙用の装備を排し、重力下仕様に改修した機体です。
重力下仕様に改修されたJ型
脚部ロケットランチャーや腰部にクラッカー等、重力下仕様の装備が追加されています。
ジェネレーターの冷却方式を空冷式にしたりした「陸戦用ザクⅡ」とも言われます。
簡単に言うと「陸戦用・万能型歩兵」で、地球の環境に適応しつつもモビルスーツ等との戦闘にも対応できる性能を有しています。
MS-07 グフの能力
ブリティッシュ作戦を失敗し地球侵攻を本格化させたジオン公国軍は、今後 実戦配備が予見される地球連邦軍のモビルスーツに対応する目的で、新しい機体を開発します。
それがMS-07 グフです。
MS-07 グフ
主な装備はヒートロッド(ムチ)・フィンガーバルカン・ヒートサーベル等です。
陸戦用に特化され、モビルスーツ同士の「格闘」を重視して設計された接近戦用の機体です。
その設計コンセプトは良かったと思います。
しかし、この機体はそのコンセプトが故に「近づかないと攻撃できない」という問題点を抱え、敵に近づく=死傷・大破率が高まるのでパイロットの熟練が求められるに加え、操縦の「慣れ」も必要であり、非常に癖のある扱いにくい機体でした。
使いこなす事が出来た ほんの一握りのパイロットは、エース級の活躍をする事ができたと言われていますが、機体もパイロットも消耗するリスクが増えるので生産は控えられるようになります。
簡単に言うと「ゲリラ戦特化型歩兵」で、パイロットの適正が求められる特殊な性能を有しています。
MS-09 ドムの能力
ドムはグフと同じく、地球連邦軍のモビルスーツ配備に対応出来る戦闘力を保有する事と、グフの運用上の問題点
- 近づかないと攻撃できない。
- 水域や荒地、山岳等での機動性の低下
- 武器の火力不足
を主にクリアするために開発された機体です。
MS-09 ドム
主な装備はジャイアントバズ・拡散ビーム砲・ヒートサーベル等です。
この頃 戦場に出現しつつあった地球連邦軍のモビルスーツに対し、グフの「対モビルスーツ格闘戦能力」を踏襲しつつ、機動性と火力不足を補った設計を施しドムは完成します。
その特徴的な機能、ホバーリングによる縦横無尽に展開できる機動力は地球連邦を圧倒するかに思えました。
しかし、一方ではジャイアントバズ頼りの攻撃に終始し胸部にある拡散ビーム砲は目くらまし程度の威力しかなく、結局はモビルスーツに本格的なビーム兵器を搭載する必要性があると言う事を浮き彫りにさせる存在にすぎない機体となります。
ホバーリング機能は戦局によって有効に活用されました。
その例が黒い三連星が得意としていた「ジェットストリームアタック」です。
この機体を簡単に言うと「高機動型重歩兵」と言ったところで、相反する「重くて速いと」言うアンバランスな特徴を持ち、性能が機動力に片寄ってしまった機体と言えます。
宇宙用に改修されたリック・ドムなども量産されましたが、その頃ジオン公国軍はモビルスーツ製造の規格統一を行う「統合整備計画」を発令していて、当該のこのドムはその計画前から量産が開始されていたので、その計画の進行が待たれ量産は積極的には行われませんでした。
MS-14 ゲルググの能力
ジオン公国軍はモビルスーツ開発のパイオニアでありますが、その技術力は一年戦争時に地球連邦に凌駕されます。
驚異的な活躍を見せる地球連邦軍所属機・RX-78-2ガンダム。
ジオン公国軍がこれまで行ってきたモビルスーツの開発や、上記してきた紆余曲折を経てたどり着いた各性能を集約し、ガンダムをお手本として完成させたモビルスーツがこのゲルググです。
MS-14 ゲルググ
ビームライフルを装備し、モビルスーツにも戦艦等にも対応できる攻撃力と防御力・機動力を兼ね備えたジオン公国軍最後の量産機です。
ゲルググはドムで確立されたホバーリング機能を引き継ぎ、高い機動力をそのままに、ビームライフルやビームサーベル(なぎなた)等のビーム兵器を標準装備し、シールド(盾)により防御力も向上して、その能力は地球連邦軍の主力機ジムを圧倒しました。
ジオン公国軍はこのゲルググで初めて攻撃力・防御力・機動力の性能バランスがとれている機体をようやく開発する事に成功しましたが、この時既に戦争末期で活躍の場は殆ど与えられませんでした。
この機体を簡単に言うと「高火力万能型機動歩兵」と言ったところでしょうか。
まとめ・考察
ジオン主力モビルスーツの対モビルスーツ性能の経緯は下図の流れになります。
型式 | 特徴 | 対モビルスーツ格闘能力 |
MS-05 ザクⅠ |
攻撃型拠点制圧用建設機械 | × |
MS-06C ザクⅡC型 |
核武装した歩兵 | ▲ |
MS-06F ザクⅡF型 |
万能型歩兵 | ● |
MS-06J ザクⅡJ型 |
陸戦用・万能型歩兵 | ● |
MS-07 グフ |
ゲリラ戦特化型歩兵 | ●●● |
MS-09 ドム |
高機動型重歩兵 | ●● |
MS-014 ゲルググ |
高火力万能型機動歩兵 | ●●● |
ジオン公国軍はモビルスーツの開発にあたり、当初 対モビルスーツを考慮しなくてもいい状況からのスタートでした。
しかも短期決戦のみを想定していたので、その期間を凌げる程度の性能しか求めていなかったのだと考えられます。
一方の地球連邦軍は一年戦争の緒戦でモビルスーツの圧倒的脅威の前に手も足も出ませんでしたが、その脅威であるモビルスーツと同等以上の性能を有した独自のモビルスーツを開発する事が必須である。
と言うところがスタートラインでした。
つまり、地球連邦軍は敗戦を意識する程追い込まれた状態だったので、短い時間の中でありながら高度で緻密な分析を行い、使える技術や資金を可能な限り投入し、その緊迫感からの勢いで あっという間にジオンのモビルスーツ性能を凌駕してしまったのです。
地球連邦軍のスタートラインが厳しいものだったので試験段階であったRXシリーズが理想的な性能を持つモビルスーツと言えるほど完成度が高くなってしまい、いい意味での「気合い入りすぎ」があったのかも知れません。
なんか予想以上に良い出来になっちゃったねー。
という感じですかね。
アムロの父、ティム・レイが優秀だったと言う事でしょうか。
連邦は優秀な人材を失ったネ。
戦争に勝利しなければならないジオン公国軍は、モビルスーツ開発のパイオニアではありましたが、失敗が許されない状況の中で技術推進についての詰めと押しの一手が足りていないと言う結論に至ってしまいます。
やはり全体的な戦争のプランニングが甘い感じがしますね。
すんません。
以上 余談でしたー。。
[…] posted with カエレバ 楽天市場 現在、緑(主にジオンのMSが収録されている色)を主軸としたデッキを構成する中で、ザク軸にすべきかドム軸で作るべきかで悩み、煮詰まりながらいろいろ見ている中で、ジオン軍MSの技術ツリーなんかをふと目にしてしまいます。 そして、ジオン側から見れば敵方となる地球連峰の方とも比べてしまうんですね(^_^;) […]
ゲルググは汎用とされていますが、これは宇宙戦専用なのでは?
そう思わせるのは足の形状で、足首を覆う装甲の形状です。
仰向けに寝かせた状態からの起立を想像してみてください。
「ゲルググ、大地に立つ」ができるでしょうか。
それとも、地上では装甲を外して運用するとか?
すると、「足を狙え! 足が弱点だ!!」と集中攻撃を受け、
ザクⅡより使えないことに。
プッシーキャノンさん
コメントありがとうございます。
ゲルググの足。
実は、プラモデルを作っていた時にそれを感じた事がありました。
前傾斜の坂では、それが当たってしまって立てない!
これは由々しき問題です。
陸戦型ゲルググの画像など見ても、外観に変化はありません。
ザクやグフの股関節周りの装甲は、「硬質ラバー」と言う設定があります。
もしかすると、その部位は曲がるのでは?
でも、スラスターが内装されてるので、ラバーでは溶けるな。。
なにか、いい理屈や考え方はないかなぁ。。
みなさまのご意見。お待ちしておりまーす!