ジオン公国軍は、宣戦布告後のブリティッシュ作戦、ルウム戦役を新兵器モビルスーツを駆使し、一方的な攻撃を仕掛け地球連邦軍を圧倒しました。
しかし、目的であった地球連邦軍本拠地ジャブローへのコロニー落としは成らず、作戦は失敗に終わります。
ただ、強烈な戦力インパクトを地球連邦政府に与えることは出来ていたので、それを利用し南極条約の交渉も強気で臨みましたが、これも失敗。
ジオン公国は、一年戦争緒戦を確かに優勢で終えました。
しかし所詮それどまりで、各作戦や交渉は結果的にすべて失敗しています。
負けることが許されないジオン公国は、一体どの様なプランを元に戦争を仕掛けたのでしょうか?
ジオン公国の戦争プランニング
ジオン公国は、国力が地球連邦に比べ1/30という大差ある不利な状況の中、戦争を仕掛けました。
もちろん勝算ありとの結論に至ったからです。
その切り札は、心血を注いで完成させた新兵器モビルスーツの実戦配備です。
ブリティッシュ作戦は、一週間で作戦が終了したので、別名「一週間戦争」と呼ばれていますが、要はモビルスーツの高い攻撃力や作業能力・汎用性により速やかに作戦を遂行させ、極めて短い期間で戦争を終わらせるつもりだったのです。
ですので、当初のプランニングは
- 初戦であるブリティッシュ作戦の成功(ジャブローの陥落)
- 地球連邦の混乱の中 終戦協定のテーブルに引きずり出し、調印させ 地球連邦の実効支配(植民地化などかな?)
と言う様な流れでしょうか。
しかし、相手あっての戦争です。
故に思い通りにならない事の方が多いはずです。
ここで疑問に思うのが、絶対に勝利しなければならない中、上記プランが成らなかった事を想定した「プランB」的な物はあったのでしょうか?
それとも絶対に作戦は成功する完璧なプランだと考えていたのでしょうか?
ブリティッシュ作戦の真似事? ルウム戦役
ルウム戦役はブリティッシュ作戦の延長戦みたいな物ですが、目的はブリティッシュ作戦と同じで、スペースコロニーを地球連邦本拠地ジャブローへ落とし陥落させる事です。
もう一度同じ事をやろうという作戦です。
確かに地球連邦軍もモビルスーツの圧倒的威力の前に大きく戦力を喪失していましたが、
一度失敗した事を30倍もの国力がある相手に、確実に成功させられるのか?
この事を考えるとルウム戦役は、絶対に短期決戦で戦争を終わらせなければならないジオン公国軍が、プランBとして練りに練った作戦とは思えません。
しかも、結果 ルウム戦役も作戦は失敗しているのです。
となれば、ジオン公国軍はブリティッシュ作戦に絶対の自信を持っていて、別のプランを立案してなかったのではないかと推測できます。
作戦プランは決め打ちで、ジャブローの陥落が絶対条件であった為、失敗したプランを付け焼刃的にもう一度実行したように見えます。
一方の地球連邦軍としては、ジオン公国軍の目的がジャブローの陥落であったことは、この2つの作戦により明白になりました。
別の見方をすると、作戦が失敗したにも係わらず、芸も無く同じ事を2度繰り返してでもスペースコロニーを落とそうとしたという事は、地球連邦軍の本陣であるジャブローの「短時間」での陥落に執着しているとも解釈できます。
南極条約の違和感
地球連邦政府はブリティッシュ作戦とルウム戦役によって予想だにしないインパクトを受け、敗戦を強く意識した時がありました。
しかし、よく考えてみると、ジオン公国軍の脅威は確かにもの凄いものでしたが、ただ結果として残ったのが、ジオンは緒戦の作戦を二度失敗したという事実です。
逆に言えば、地球連邦軍はモビルスーツによる奇襲攻撃に耐え、ジャブローへのスペースコロニー落下を阻止し、ジオン公国軍の思い通りにはさせなかったという事実もそこにあります。
そこで知りたくなるのが、ジオン公国の実情です。
- 新兵器であるモビルスーツまで開発し、短時間でのジャブロー陥落に執着している。
- でも2度に渡る作戦は失敗した。
- 国力は1/30
・・・もしかしたら、本当はジオン公国の方が地球連邦に比べ苦しいのでは?
このような憶測が飛び交う中、ジオン公国は地球連邦に休戦協定を強気な態度で申し入れてきます。
レビル中将 救出作戦の意義
この時、ルウム戦役でレビル艦隊を率いたレビル中将は、ジオン公国に捕らわれ捕虜となっていました。
レビル中将はこの後、地球連邦軍から救出されるのですが、ドライな考え方をすれば、レビル中将をそのまま捕虜としてジオン公国に拘束させていた方が、地球連邦軍としても戦争の成り行きや交渉事において色々な理由や条件を付ける材料になり得ます。
また、地球連邦軍内にもレビル中将の事をよく思っていない幹部や派閥もありました。
それでも救出を行ったという事は、休戦協定に臨む前に ジオンの実情を得るのは最優先事項であったと考えられます。
捕えられたレビル中将は、ジオン公国の実情を掴んでいる可能性がある。
これらの理由から、高い優先順位に位置づけられ救出作戦が実行されたのかもしれません。
敗戦へのカウントダウン 地球降下作戦
地球連邦軍は、救出作戦を強行しレビル中将を奪回。
無事に救出する事に成功します。
やがてレビル中将は「ジオンに兵なし演説」を行い、目の当たりにしたジオンの内情を暴露した事から、戦争はそのまま継続となり、ジオンが持ち掛けた休戦協定は、戦争をするに当り最低限のルールを定める戦時法協定として締結される事となりました。
【動画】ジオンに兵なし演説の様子。
ジオンの思惑は完全に崩れたネ
南極条約時の会談の様子。
両軍の国旗が掲げられ、対等に協議が行われています。
これでジオン公国軍は想定していたプラン「短期決戦」ができなくなり、底をつきそうな国力を維持・回復させながら戦争を続ける必要がある事から地球降下作戦の実施を決定します。
国力が無い上に長期戦に突入した現実は、圧倒的に不利な立場になったと言えます。
というどころか、長期戦となる地球降下作戦を実行した=敗北を意味しています。
自らの国家の存続をかけた戦争だったにも係わらず、これらの作戦や交渉を成功させられなかった、また、短期決戦用の複数のプランが立案されていなかった事は、ザビ家に支配された国家の運営形態が機能していない事を露呈しています。
この組織力の貧弱さが先行きを読む詰めの甘さにつながり、これら作戦失敗以降の地球降下作戦においても初歩的なミスを連発したジオン公国は、真綿で首を絞められる様に、じわじわと確実に敗戦にむけて戦い続ける事となってしまったのです。
まとめ・考察
ジオンの一年戦争緒戦のプランニングについて記述しました。
- 2度のコロニー落としの失敗。
- 捕らえたレビル中将を逃がすセキュリティーの甘さ。
- ハッタリがバレてしまった南極条約交渉。
- 地球降下エリアを広く取り過ぎてしまい、補給が行き届かなくなるという失態。
- それにより、こう着状態に陥り、戦争長期化の確定。
宣戦布告(1月初旬)から地球降下作戦(3月末)までの流れを見ると、ことごとく凡ミスを繰り返している事が分かります。
この事実から、ジオン公国は「プランB」を立案しておらず、なんとなく流れと思いつきで戦争をしてる気がるすのは私だけでは無いのではないか。。
この事実をジオンに突き付ければぐうの音も出ない筈。
やはりジオンは敗戦に向けて戦い続けていると言えるのでは無いでしょうか?
すんません。
以上、余談でした~。
以前SNSで冗談半分に出した作戦ですが、「レビルに嘘情報を掴ませて返す」というのは如何でしょうか?
例えば尋問を繰り返して疲弊させ、判断力を奪った状態で、見せ金の戦力をずらーっと並べるのです。
あとは、史実のミッドウェー海戦の様に「勝ちに驕ったジオン兵がうっかり情報を漏らした」と言う体をもって、ジオンの戦力が充実しているかの様に誤認させ、捕虜交換で返すのです。
連邦もバカでは無いのですぐには信じないでしょうが、「勝てると思っていた戦いでの敗北」はショックが大きく、敵が実態より強大に見えてしまうのはよくある事です。敗軍の将であるレビルが「ジオンに兵なし」の演説を行わなければ、通常では一顧だにされない様な妥協案がまかり通る可能性があります。
勿論、レビルもプロですので、そう易々と信じてくれるかどうかは怪しいですし、そもそもそんな見せ金の戦力なんてねん出できるのかと言う問題もありますが、「一応やっておく」程度の期待でやっていれば、もしかしたらうまくハマって大逆転あったかも知れないですね。
とは言え、ジオンはレビルが捕虜になる事まで想定してなかったからこそ脱走の失態を招いたわけですし、その様な強かさを持っていれば、そもそもの戦争計画は根底から変わっていたと思うので、後付けの結果論ではありますが、思考実験としては面白いのではないかと。
萩原裕さん
コメントありがとうございます。
なるほど。
心理誘導を基にした情報操作と言う事ですね。
うーむ。面白いですね。
確かに、レビルが帰還し「やっぱムリだわ」的発言があれば、どん底まで落ちていた連邦の士気もとどめを刺されていたかもしれません。
レビルがネガティブであればV作戦の発動も無かった訳だし、左遷や降格をさせられたでしょう。
そうなると体制を変えることを望まないレビル反対派閥が息巻いて旧態依然の体制でジオンに相対する事になると思うので、ジオンにとっては上手く泳げたかもしれませんね。
これだけでも、結構なインパクトを残す結果だと思います。
萩原裕さんのこのプランと、以前私が書いた記事
もし、ブリティッシュ作戦が成功していたら。
を融合させれば、戦争に勝てたかも。
連邦が怯んでる間に、コロニー落としのスタンバイ状態にする。
あー。これはハマるかもなぁー。
結果論ですが、ジオンは勝てる戦争のチャンスを幾つか見落としてますね。
ギレンが傲慢すぎた結果なのかもしれまんねー。
まあ身も蓋もない話をすれば、開戦から地球降下作戦までのジオンの行動は「最終的にジオンが負けるため」の「大人の事情」による部分が色濃いですしねえ…
ルナツーまで落とされてたら連邦軍の宇宙での反攻作戦なんて不可能でしょうし、ルウムで「大勝」して更に大規模な地球降下作戦をできる力があるのに二度目のコロニー落としは余力がなく出来なかったってのも違和感がありますし…
オリジン版は一連の展開を連邦とジオンそれぞれの政治的背景を混ぜ込んで上手く理由付けして、逆に生々しい説得力のある裏事情を演出していて面白かったですね。あれは流石だと思いました。ルウム戦役もコロニー落としではなくルウム制圧とレビル艦隊の殲滅が目的になってましたね。(漫画とOVAで展開に少し違いはありましたが)
オリジン版に準拠するならば、私は二度目のコロニー落としは軍事的にではなく政治的に出来なかったと妄想してます。デギンやランバラルが嫌悪感を示していたように、自分たちの母なる大地を大量破壊兵器にするというはスペースノイドにとって相当ハードルが高いものだと思います。しかも一度目で失敗して民間人を大量虐殺してますから「じゃあもう一回やりましょう」とは簡単にはいかないと考えます。
また一度目の時点で地球環境への影響も甚大ですし、キシリアやマクベ等「地球の富と国土」を得たいと考える勢力としてもこれ以上の地球環境へのダメージは避けたいと考えるのではないかと。
ナナシアさん
コメントありがとうございます。
二度目のコロニー落としは、政治的な理由で出来なかったと言う考え方は外れていないと思います。
目的は地球圏の掌握と支配にあったと思いますので、理由は立ちますね。
レビル艦隊をせん滅した時、ジオンは何故ルナ2を攻略しなかったのでしょうか?
コロニーを護衛しながら行われるコロニー落としを実行するより、地球降下作戦を行える部隊編成の余力があったのなら、先ずは地球に対する制空権を確保する方が、後の展開も楽だったのでは。
制空権をとる軍事行動は、支配したい地球に対する影響はほぼ無い状況で実行できたと思います。
ルナ2を攻略された地球連邦は、宇宙での軍備再編するには月面都市の協力か、地球から戦力を打ち上げるしか方法がなかった筈です。
地球連邦は重力に逆らう形で実行する事になる軍備再編の上記2つの選択肢をジオンは容易に抑止できたと思います。
なぜなら月面都市には難民があふれ混乱していた上にアースノイドは少なかったでしょうし、地球からはもぐらたたきの様に撃墜する事ができるからです。
その上で、政治的にコロニー落としができなかったとしても、現代の各国が核兵器を保有している様に、コロニー落としのスタンバイ状態にしておけば、なおコントロールはやりやすかったと思います。
そんな事考えながら、こんな記事を以前、書いてみました。
色々な考察が出てきて、面白いです。