ザクやグフが装備している、皆さんご存知のヒートホーク。
ヒートホークの例。
ガルマ・ザビ大佐専用ザクですね。
後に地球連邦がモビルスーツをロールアウトさせ、ビーム兵器を標準化させてしまった事で、陳腐化してしまった感があるヒートホーク。
しかし、実は信頼の置ける兵器でありながら、意外に多機能な一面も持ち合わせています。
ビーム兵器の開発が宣戦布告までに間に合わなかった(間に合わす気が無かった)ジオン公国軍は、接近戦用の武器としてヒートホークを開発し、採用しました。
ジオンの戦争の目的と照らし合わせ、連邦のビーム系格闘武器と比較してみましょう。
目次
ヒートホークの概要
ヒートホークとは、刃の部分を6000℃に加熱し(諸説あります。)破壊力を向上させた「闘斧」です。
正しく表現するならば「ヒートトマホーク」とか「ヒートアックス」とかですかね。
IHヒーターと同じような仕組みですが、高周波電流による加熱でヒート化させます。
地球連邦が採用している「ビームサーベル」は、Iフィールドを構成し、それにビームを流し込み、ビームの減衰がどうだのあぁだの、色々と化学的な小難し技術が導入されている影響で、電気エネルギーを多く消費してしまいます。
それに比べ、ヒートホークは仕組みが単純なので、ジェネレーター(ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉)への負荷を抑える事ができます。
ジェネレーターを高出力化できなかったザクシリーズにおいて、この低負荷はヒートホーク採用の大きなポイントとなりました。
ヒートホークの刃
6000℃もの高温に加熱されるヒートホークの刃。
この部分は、
- 高分子(ポリマー)セラミック
と言う、本来なら別異で分類される素材を組み合わせて出来た特殊な物質で出来ています。
この刃の部分は、加熱時と通常時を反復して繰り返すので熱変動の幅が大きく、その影響から劣化します。
それに加えて攻撃の衝撃によって消耗するので、ある程度使用すると交換が必要になる様です。
ヒートホークの利点とビームサーベルとの比較
ヒートホークは、それそのものに重量があるので、仮に何らかの原因で故障した・電力が供給されくなった等 トラブルが発生しても そのまま使う事が出来ます。
ヒートトマホークとして使えるって事だネ。
ヒートホークの利点
ヒートホークは重心位置が刃の部位辺りになるので、モビルスーツの腕を振り動的に加速させれば、対象物に結構なダメージを与える事が出来ます。
ヒート化できなくても、威力こそ落ちますが武器として使い続ける事ができるのです。
また、柄の部分が尖っており、点で攻撃が必要な場合は持ち替えて使用できます。
つまり、ヒートホークは「斬る」事はもちろん、「打撃」や「刺す」を使い分ける事もできるのです。
ビームサーベルの特徴
一方のビームサーベルは、「斬った」とか「刺した」とかの様に見えますが、実際は溶解、すなわち「溶かす」に特化した武器です。
モビルスーツを一刀両断してしまう性能を有していますが、実際は ビームの圧倒的熱量により「溶断」しているのです。
ガンダムに装備されている物は、厚さ30㎝のチタニウム鋼をたったの1秒で溶断します。
【動画】ザク 一刀両断(溶断)シーン
アっという間。「スパッ」て感じだナ。
しかし、その熱量を発現する為の複雑な構造は、電気が来ない等のトラブルが生じると刃が形成されないので、ただの短いスティックと化してしまいます。
つまり、武器として成り立ちません。
故障してしまうと、全く使えなくなるというリスクがあります。
ヒートホークとビームサーベルの比較
上記を基に比較してまとめると、
- ヒートホークは故障しても使用可
- ビームサーベルは故障したら使用不可
ヒートホークの様な実体武器は、単純であるがこそ故障しても使い続ける事が出きると言う大きなメリットがあるのです。
ヒートホークの道具としての利用
ジオン公国軍が宣戦を布告した当初、国力の少なさを補う目的も踏まえ、地球に兵力を投下し地球連邦が所持する拠点や工場、施設を奪取するというプランが盛り込まれていました。
敵をけん制しつつ無力化させ、極めて健全な状態でそれらを手中に治めたい。
モビルスーツを開発した目的の一つとして、戦闘の場面はもちろん、作業用の重機としても人型にした事による高い汎用性を求めたのです。
もし この時、ジオンのモビルスーツがビームサーベルを所持して、拠点や工場を奪取したとします。
ビーム兵器の欠点は、手加減ができない事。
出力の調整は出来るのですが、基本的に触れたものは全て溶かしてしまいます。
壊したものは治せる可能性がありますが、「溶解」したものは歪みや伸縮、中には原型を留めていない壊れ(溶け)方をしたり、熱による酸化が発生し材質が変異する事もあり、なかなか元には戻せなくなるのです。
せっかく奪取した高度なプラントや工場が修復困難となれば、ジオンの作戦進行の大きな妨げとなってしまいます。
例えば、ジオン公国軍が地球降下作戦後に奪取したキャルフォルニアベースは、その後、水陸両用機や量産型モビルスーツの一大生産拠点とすべく、速やかに稼働体制を整える事が出来ました。
グフはキャリフォルニアベースで生産された代表的な機体です。
それを可能とした理由は、基地をほぼ無傷で手中に治める事が出来た為です。
ジオンがヒートホークを標準武装とした理由の一つは、徹底的に破壊したい場合はヒート化させ、破壊を最小限に留める時はトマホークとして使用する事ができる。
状況により性能を使い分けできるメリットは、この様な活動時にも必要であり、モビルスーツの汎用性を更に引き上げられる好条件と判断されたのです。
また、柄の部分のストロークが長いので、テコを使った作業や冶具として使う事も出来ます。
コの事で機体への負荷を減らしたり、より大きな力を必要とする場合に重宝しまス。
戦闘のみならず、あらゆる局面で使用できる汎用性の高さは、携行する武器にも求められていたのです。
ヒートホークとビームサーベルとの性能比較表
ヒートホークとビームサーベルについて色々と記述しましたが、まとめて性能比較をしてみます。
項目 | ヒートホーク | ビームサーベル |
攻撃力 | ●●加熱時 /●非加熱時 |
●●●● |
トータルコスト | ●●● | ● |
メンテナンス | ●●● | ● |
取り回し | ● | ●●● |
仕組みの簡易さ | ●●● | ▲ |
汎用性 | ●●● | ● |
消費エネルギー量 | ●● | ● |
こうして見てみると、ヒートホークの費用対効果はとても高いと言えそうですね。
しかし、ビームサーベルの攻撃力は圧倒的です。
まとめ・考察
ヒートホークとビームサーベルを比較してみました。
ジオン公国軍がビームサーベルを標準化できなかった理由が、
- モビルスーツのジェネレータ出力をビーム兵器に対応できる程に確保する事が出来なかった事。
- 1/30の国力を補う必要があるので、攻撃していいけど壊すなよ。
ナんか難しい事言ってるナ
地球連邦軍がビーム兵器を標準化した理由が、
- ジオンに技術で劣る訳にはいかない。
- 敵は全て薙ぎ払っても構わない。
地球連邦からすれば侵略された側なので、それらは徹底的に排除する必要があります。
最高の技術を積極的に取り入れ、国力に劣るジオン公国に徹底的に対抗しようとしたのです。
それぞれ目的が異なるので、地球連邦軍はジオンとは異なり、ビーム兵器が最良の選択であったと解釈できます。
上記した表を無視し、30倍もの国力にものを言わせ費用対効果なんて どうでもいいから、とにかくジオンを凌駕しようとした地球連邦軍。
しかし、ここで目を疑う事実!
当時の最新技術で、全てを溶かすビームサーベルが、ヒートホークと「切り結ぶ」と言う事態が発生!
引用元:Majikana Karuha ( @karuha.majikana )
劇中でもこのシーンはあります。
安価だし、仕組みが簡単な上、ビームに対する防御も出来るとなればヒートホークの価値と評価は数段跳ね上がります。
宇宙世紀で最高の破壊力を持つビームと、比較的ベーシックな技術で出来ているヒートホークが なんで切り結ぶ事ができるのか?
そう考えれば、ジオンの技術力って連邦よりスゴイのでわ!?
そんな皮肉も聞こえてきそうですが、地球連邦軍の技術士官の気持ちになって色々と調べ、考えてみました。
- ヒートホークを加熱する時の通電により「磁界」が発生し、ビームサーベルのI・フィールドと反発するから。
- 高分子セラミックそのものが熱に強く、ビームでは溶けない。
- ヒートホークにもIフィールドの発生デバイスが付いている。
- etc……
むぅん。
んん~。。
この結論は別途にしますね。
オい、オマエ逃げるのカ!
・・・・・
以上、余談でした~。
ヒートホークとビームサーベルが切り結べるのはヒートホークの刃の表面に発生するプラズマと反発するからだそうです。
村人さん
コメントありがとうございます。
プラズマ。
発生メカニズムを勉強してみます。
ただ、プラズマの発生環境はヒートホークの6000°程度では厳しい様な。。
いや、ここは多少のミノフスキー理論を織り交ぜれば何とかなるのか。な。
新たな考え方を教えてもらい、ありがとうございます。
いつも勉強させて頂いています。
ヒートホークってガンダムの盾を切り裂いてる描写もあったし、威力は充分なんですよね。
対MS用の近接武器は低コストで信頼性もある枯れた技術の方が優秀なのではないでしょうか。
特別な機構も無さそうなズゴックの爪だってジムをブスッとしてますし。
メイスンさん
コメントありがとうございます。
勉強させて頂いてるなんて。
弊サイトでそんな誉め言葉。
・・・モチベーションあがりますぅー。
誠にありがとうございます。
何事も結局、シンプルでローテクが生き残る様な気がします。
ズゴックでジムをブスッとな。
あんなの見せられたら、ビームで無くてもいいのでわ?
ってなりますよね。
ただ、ビームサーベルは誰が扱っても切れる。
ズゴックのブスッとのヤツは、シャアの力量があっての話かも知れませんね。
私はヒートホーク ビジュアル的にも好きですねー。
いつも楽しく見せて頂いてます。
確かに、ヒート系の武器が駆逐されない理由の1つに、「ジェネレーターに負荷をかけない」は大きいかも知れません。何しろルナチタニウム製のガンダムシールドをぶった切っていますので、威力は申し分なく、GMⅡの装甲も貫通可能(UCのゾゴック)。
グリプス戦争以降、ビームコートが普及している上ビーム兵器の高出力化で、MSジェネレーターにかなりの負荷がかかっている様です。サザビーの敗北も想定していないνガンダムとの長期戦で、ジェネレーターが出力低下をきたしたからと言う説もありますね。
ならば、長期戦で出力が低下している際、ある程度の継戦能力を確保する為、燃費の良いヒート系武器をサイドアームとして使用するのは自然な発想だと思います。しかも、ヒート系ならビームコートは関係ないと言う隠れた利点もあります。R・ジャジャの銃剣、ヤクト・ドーガやクロスボーンガンダムのヒートナイフは、一見時代遅れに見えて合理的な理由があったのではないかと。
連邦側は、ジェネレーターが息切れしても後続の部隊と交代がある程度可能なので、それほど燃費に気を遣う必要はありませんが、ネオジオンやCVは想定していた短期決戦が失敗した場合助けは無く、独力で離脱することが必要。じゃあ一応持たせておこうかと。
連邦製のハイザックはスペック上の「妥協」でヒートホークをチョイスしたので例外とします(その他にも例外があったらごめんなさい)。
もし、サザビーがヤクト・ドーガの様にヒート武器を装備していたら、宇宙世紀の歴史は変わったかもと考えてたら面白いですね。
ハイザックはゲーム版では驚いた事にビームサーベルよりヒートホークの方が高威力なんですよね…機体解説に於ける「ジェネレーターの不具合によりベーム兵器を同時使用出来ない」と言う解説にも合致しますね。
サザビーの場合はスラスター出力がνより多いのと、フィンファンネルの様に外部ジェネレーターを持たなかった為、長期戦により推進剤の過剰消費を招いたのではないでしょうか。
ザク当時ならシャアの蹴りはアムロのパンチに勝った筈です。
技術陣は実体兵器よりも、蹴りを重視した設計をすべきでしたね。
「足なんで飾りです!」
偉い人は全部お見通しだったんですね。
白い矮星さん
コメントありがとうございます。
ビームよりヒートホーク、ヒートホークより足蹴り。
突き詰めるとは物事はアナログで無手が生き残るのでしょうかね。
足蹴り重視の設計でいけば、肩にスパイクアーマーでは無く、足にスパイクつけても良かったかも。
いろいろなハイテクに囲まれていると、確かに強力なのでしょうが、ひとたび事切れると無力化します。
足は強力で、腕は落っこちてる道具を使う。
戦いは整えられた兵器を使うのではなく、状況を理解し上手く利用した人が勝ちですね!
そうなると、グフ乗りが一番つよいかも。
萩原優さん
毎度コメントありがとうございます。
究極はローテクを使いこなせた方が強い。
という事なのだと思います。
ハイテクは移ろいが早く陳腐化する。と言う事はそれに対抗できるハイテクができたと言う事ですよね。
だからローテクなものが消えずに身の回りに在るという事は、シンプルにハイテクで駆逐できなかった優れた技術と言う事でしょう。
ヒートホークはそれでいてルナチタニウム製のガンダムシールドをぶった切るので、もうこれは無敵に近い。
この前提で行けば、サザビーに実体武器を装備させなかった技術陣はどうなのか。
設計は?
組織は?
総帥のプライドが実体武器など使う前に勝負をつけてやるという事だったのか。
出撃したら必ず帰ってくる主義のシャアがノーマルスーツを着ないという事に拘っていたので、あり得る話です。
でもそれを押し切ってでも、ダイクンの遺児でジオンの象徴で総帥でニュータイプである唯一無二の存在のシャアに対して、実体武器をゴリ押しでも装備させるべきではないか。
それが許されない、シャアのカリスマに依存する組織体制だったとすれば、ネオジオンは敗れるべくして敗れたと言われてもしょうがない気がします。