人類の革新・進化の形「ニュータイプ」ってなに?

ニュータイプ 人類 革新

ガンダムを語る上で、避けては通れないキーワードの中に、「ニュータイプ」という言葉が出てきます。

直感が冴え、誤解なく相手や物を理解する能力を持っている ちょっとしたエスパーの様な存在で、主人公のアムロ・レイシャア・アズナブル等がそれに当たります。

地球の自然環境破壊により、宇宙に住む事を余儀なくされた人類。

宇宙移民計画 スペースコロニー

地球連邦政府と宇宙移民計画

2015年3月29日

その新しい環境の中で発生する、人類の進化の形とされる「ニュータイプ」

しかし戦争は、その能力をも戦争の道具に変えようとします。

人類の革新 ニュータイプ

宇宙世紀に入り、破壊された地球環境を回復させるため、人類は地球から疎開し宇宙に漂う真空の筒「スペースコロニー」で生活をするという「宇宙移民計画」がスタートします。

ぴろすけ

スペースコロニー
直径6km、長さ40km程ある巨大な「筒」です。
これを回転させ、その内壁に地球と同じ「1G」の環境を作り、人々が生活しています。

地球連邦政府が主導した宇宙移民計画は順調に進み、50年の歳月を費やして地球にいた90億人もの人口を20億人にまで減少させる事に成功しました。

しかし、一方では計画の目途が立ち、計画運営の世代交代も進んでしまった影響で、地球移民計画の意義や目的が次第に軽視される様になっていきます。

宇宙移民者は、そんな地球連邦政府の怠慢を感じながら、浮遊するデブリや太陽から放たれる放射線等、生命に対して起こり得る 様々な危機要因をスペースコロニーの外壁一枚越しに感じながら生活を営んでいきました。

そんな一定の緊張感を必然としならがらも生活を続け、子孫を育み、生きるためのあらゆる責任感から やがて自律心や独立意欲が高まっていきます。

その過程の中で、第六感ともとれるエスパーの様な能力を持つ人が現れはじめたのです。

宇宙という新しい生活環境に適合しようとした人類が生まれたのか?

しかし、すべての人がその能力を身につけられた訳ではありませんでした。

ニュータイプ発生の予測と存在

ジオン・ズム・ダイクンは、ジオン共和国の独立を宣言する前から、このニュータイプについて言及していました。

ジオン・ズム・ダイクンも先に述べた新しい環境に適合する人種が生まれるのでは、と考えていたのです。

ジオン共和国の国家独立の考え方「ジオニズム」の中に、ニュータイプの存在と発生が記されていて、これが民衆に対しての動機付けや政治的意味を持ち、結果、国家独立までたどり着けた大きな要因となりました。

宇宙移民者が支持する「ジオニズム」と一年戦争

2015年4月21日

しかし、それは1つの考え方に過ぎず、ジオン共和国内でもニュータイプの存在を半信半疑する声は少なくはありません。

ジオン共和国と相反する地球連邦政府に至っては、その考え方や存在を更に軽視しました。

ただ 一年戦争が開戦し、ビームをも避けてしまう地球連邦軍のアムロ・レイやジオン公国軍のシャア・アズナブル等の特殊な、ある意味 異様な活躍ぶりに「ニュータイプ」の存在を少しずつ認めざるを得なくなっていきます。

やがてフラナガン博士のように、ニュータイプを研究する科学者が現れたり、その存在を軽視した地球連邦にさえもニュータイプを研究する機関が設立されていったのです。

ニュータイプの能力

そのニュータイプが、実際の戦闘でどのような能力を発揮したかというと、

  • 相手の行動が読める(見える)。
  • テレパシーの様な能力で誰かの危険など察知できる。
  • モビルスーツの性能などを正しく認識できる。
  • 直感で相手の弾をよける事が出来る。
  • サイコミュシステムを使えば、兵器を遠隔操作できる。

といった内容です。

人類の進化 ニュータイプの能力は一般人と比べると戦闘中では大きなアドバンテージになります。

このアドバンテージを用いてアムロ・レイやシャア・アズナブルは超人的な活躍をしているのです。

しかし本来 ニュータイプは、あくまでも人類の革新であり、地球環境を回復させるために宇宙空間を生活の場として開拓した人々の新しい進化の形だったはずです。

その定義を唱えた宇宙移民のパイオニアであるジオン公国自らニュータイプを、戦争の道具にしてはならいのではないか?

ですが、彼らニュータイプの能力は戦局を一変させる程の力を持っている為、いつしかニュータイプは「最強の戦士」と呼ばれ、その定義は薄れ去り、戦乱の中では貴重で重宝される人材となってしまいます。

ニュータイプと感応波

ニュータイプは稀に存在し、外見は普通の人。

外見だけでニュータイプと言うことを判別する事が出来ません。

ニュータイプは戦場で圧倒的な戦力となるので、軍としては喉から手が出るほど欲しい人材になる訳ですが、どこに居るかも分からないニュータイプを探すより、作ってしまえという理論が必然的に発生します。

ニュータイプ研究が両軍で進み、やがてニュータイプの能力は、ニュータイプのみが感じられる脳波のひとつ「感応波」に由来するものである事が解明されていきます。

サイコミュ 解説 感応波 ニュータイプ

サイコミュシステム

2013年8月21日

従って、この「感応波」を普通の人にも感じ取れるようにすれば良いと言う事なのですが、これを付加するには、脳波の調整や深層心理の誘導・改造などが必要となります。

しかし これは簡単な事では無く、この未完成な施術によって廃人になったり、精神崩壊を起こして情緒不安定に陥る人が殆どを占めました。

この様に「感応波」を人工的に感じ取れる能力を付加し、ニュータイプ化された人を「強化人間」と言います。

ジオン・地球連邦 双方で研究が進められていた強化人間

この強化人間は一年戦争では登場しませんが、倫理に反し 裏ではこの強化人間の研究が進められ、フラナガン博士に至っては 身寄りの無い戦災孤児を実験台にして研究を進めていました。

また、地球連邦軍もムラサメ研究所という機関で、ゼロ・ムラサメと言う強化人間を完成させていたとも言われています。


ぴろすけ

ムラサメ研究所で調整された、ゼロ・ムラサメ。
この研究所で5人目の強化人間が、Zガンダムに登場するフォウ・ムラサメです。

人類の革新であるニュータイプが原因で、人体をも改造するという暴挙が始まったのです。

ガンダムの話は、ニュータイプや強化人間の登場によって人種に対する差別などの要素が盛り込まれ、よりヒューマニティな話へ展開していきます。

要点・まとめ

  • ニュータイプとは宇宙に住むことを余儀なくされ環境の変化に対応した人類の進化と考えられた。
  • ニュータイプはジオン・ズム・ダイクンがサイド3の独立活動を行っていた時から提言していた思想である。
  • 五感(第六感)が発達し、誤解無く人や物を感じ取る事ができると考えられていた。
  • その能力は戦争に利用され、最強のパイロットとして戦場に送り込まれてしまう。

ガンダムのストーリーで最も悲劇的な扱いを受けてしまうニュータイプ。

本来、ジオン・ズム・ダイクンが唱えたニュータイプとは、互いを理解し物事を的確に把握する能力を備え、戦争なんてしなくてもいい精神状態を持つ人間の進化を言います。

劇中の描写は見る人それぞれで解釈が異なると思いますが、その視点でニュータイプを考察してみるのも面白いのではないでしょうか?

・・・つづく



ニュータイプ 人類 革新

10 件のコメント

  • ダイクンの定義やラプラス憲章に記された限りでは、スペースノイドから発生するとされたニュータイプですが、アムロやララァ、カミーユ、奇跡の三人、ウッソといった強大な力を示したニュータイプ達はいずれも地球出身者であるというのが面白いというか皮肉と言いますか。

    また、最新の宇宙世紀映像作品であるナラティブでは「”《全体》という、人の魂が集う場所”にアクセスできる人間」という新たな解釈も示されました。
    ニュータイプ…まだまだ色々な”可能性という内なる神”が秘められていそうです。

    • 名無しの一般兵さん
      いつもコメントありがとうございます。

      ニュータイプへの可能性。
      ダイクンが唱えた宇宙移民者へのモチベーション。希望でもありました。

      おっしゃる通り、宇宙移民者への皮肉でもある一方、劣等を意識させ団結を生む動力源でもありますね。

      ニュータイプの解釈は無限であってほしいし、そうあるべきです。
      まだまだ色んな意味や価値を携える「ニュータイプ」

      やはり、ガンダムは不朽の名作ですね。

  • ニュータイプというと常に「最強」を論じられる。誰が最強かは富野の発言でコロコロ変わる。今はカミーユが最強との位置付けらしいが、死者の魂を味方にできるのが最強なのか。人類が今後進化していく上で、そんなイタコみたいな能力など備わるはずもない。物の本質が分かるからと言って、それが原因で精神崩壊とはどういうことか。勘が冴えるのと死者の魂をを力に変えるのは全くの別物。前者はその可能性を期待したいが、後者は絶対にあり得ない。死者の魂とは生きている者のエゴで作り出されるものなのだから。シリーズの中でもZの駄作さが特に大きく感じる。初代での表現に留めておくべきだったのではないか。結果的に商品としては成功しているのだろうけど。

    • アンチ富野さん
      コメントありがとうございます。

      ニュータイプっていつも抽象的な表現に留まります。
      だからああでもない、こうでもない議論が今でも続き、結論の出ない議論が続く。
      いや、続かされてるのか。

      でもこれが、ガンダムの鮮度が落ちない理由だと思います。

      TV版のファーストは、ニュータイプについてエスパーみいな取り扱いをしています。
      それが劇場版では、人類の進化を匂わすような表現。

      私が小学生の時、ZZがオンタイムでしたが、マシュマーやハマーンからニュータイプの表現としてオーラみたいなのを発していたのを見て、違和感を感じた事はありました。
      「あれ?ニュータイプって結局なんだっけ?北斗の拳でもこんなオーラ出てたなー。」

      で、結局ニュータイプを明確に答えれる人はおらず、結局、ああでもない、こうでもないの終わりのないニュータイプ論が繰り広げられるのですね。
      富野さんはこのような場を誘発するために、コロコロと発言を変えているのかもしれませんね。
      もしそうであれば、策士ですねー。

  • 正直、富野のニュータイプ論などどうでもよいことなのだが、物の本質が直感で分かるのなら人類の可能性を信じたくなるかもしれない。だが自然現象なども含め教育なしに理解できるとしたら、それは偉人だらけの世界になるということなのだろうか。個性の豊かさもなくなり画一的になれば戦争もなくなるだろうが、それを人類の可能性だなどとは思いたくもない。

    • アンチ富野さん
      コメントありがとうございます。

      深い内容です。
      人間らしさとは。
      完全ではないから、いがみ合いも起きれば一方で笑いや文化が出来上がっていく。
      完全でない部分が個性とかになり、それを補うパートナーとかが必要になったり。

      エラーを起こすから人は成長し、何かを悟っていく。
      それを超越して物事の本質を理解してしまえば、確かに人の豊かさは消えてしまうでしょうね。
      感情も持たず、淡々と、機械のように。
      でもニュータイプにも感情の起伏があります。要は偉人レベルの者ではないという事か。

      結果 人は、人類は、可能性を求めるが故、不完全さを基に繁栄し、その代償で色々な物を犠牲にし、消耗しながらやがて滅びゆく運命なのだと思います。

  • 流れに便乗して、反発を承知で書かせて頂きますが、最近自分の中で「ニュータイプ」と言う概念が、どうもしっくりくるものじゃなくなっている感覚があります。

    そもそもニュータイプと言う発想が、人間を肯定できていれば出てこないものだよねと。

    勿論、SFのロジックとしては面白いし、ニュータイプの存在がガンダムと言う作品を魅力的にしている事に全く異議は無いのですが、何か作中の人物たちがニュータイプもオールドタイプも揃って「ニュータイプ」と言う言葉に振り回された結果、自分で不幸になってゆく印象が拭えなくなりまして。

    過激な言い方ですが、私は独裁者が何百何千万人虐殺しようと、宗教戦争が泥沼化しようと、人間そのものの素晴らしさは何ら棄損されないと思ってますので、「別にニュータイプなんていなくとも、まだまだやれることはある」と思えるのです。

    この辺は冨野監督自身もそんな事を仰ってましたが。

    宇宙世紀の人々は自由になる為には、「地球の重力に心を引かれた人々からの抑圧」だけでなく「ニュータイプと言う自縄自縛」からも逃れないといけないんじゃないでしょうか?

    それは、ニュータイプを根絶やしにしろとか無視しろとかではなく、彼らに全てを丸投げするのを止めて、何を担ってもらう社会にするか考える事だと思うのです。

    そうじゃないと、ニュータイプは抑圧する存在をやっつけて一時的に留飲を下げてはくれても、結局自分を追い詰めて地球に隕石を落とそうとするでしょう。

    そういったアプローチを、そのうちに二次創作とかでやってみたいなと考えてます。
    結局政治論になっちゃうんで、気を付けないと読者がおいてきぼりですがw

    • 萩原優さん
      いつもコメントありがとうございます。

      劇中、ニュータイプが一つのイシューになり、ああでもないこうでもないの言い争いの中、戦闘している場面はよく見ます。
      ただ、宇宙世紀の人々もニュータイプがなんであるかの結論が出てないまま、無形なものを物の言い訳にして都合の良い解釈と自己肯定をする材料にしている感は否めないですね。

      宗教を崇拝する感じに似てる様な気がします。

      これは良いとか悪いとかではなく、ガンダムの世界ではそれだけスペースノイドが宇宙に放り出され台地を失った事による虚無感の描写。
      それを埋めるべく、人の心を満たすべく、ダイクンは方便でニュータイプという偽りを言ったのかもしれませんね。

      そう考えると、ダイクンが言うニュータイプと戦場で活躍するニュータイプはイコールではないのかもしれないです。

      戦場に登場するのは、アムロが隔離されていた理由のように、放射能とかによる精神的奇形とかであるとか。
      では、ダイクンが言うニュータイプとは?
      この話は結局結論が出ず、議論が絶える事のないコミュニティになるのですかねー。

  • ニュータイプっ て 、進化論ならば、火山の噴火した火が枝とかに引火し、燃え盛る枝の火を洞窟に持って行って炎で体を温めたり、狩猟で得た肉に火を通して、焼いて食べると言う試みが、「生活の環境を大きく変える」と言う、そういう、試行錯誤(失敗を繰り返しながら成功に近づける)人は、火山が噴火し、たまたま木に引火した炎を見て「恐れ」て、失敗を繰り返しながらでも、洞窟の我が家にその引火した炎をもって行くでしょ(^.^) そうやって環境が変化して体の進化が起こり、生活環境が変わってどんどんと知恵を身に着けて行く。それを「進化論」というのではないか?食べ物が変わり生活環境が変わる。

    でっ、ウエイト・トレーニングも道具を使うでしょ?バーベルを使って、ダンベルを使って、いろいろ工夫して
    試行錯誤して体を鍛え上げてく。トレーニングとは、環境に適応して体を変化させて行く。これはトレーニングをする事で、洞窟に原始人が火を持って行って、生活環境を変えて行くのと同じ原理です。だから、狩猟ならば。鉄器を使って食べ物を得るでしょ。
    色々と工夫して行って、生活環境が変わることを「進化論」と言うのだと思うのです。

    バーベルををダンベルをもち上げる時は、「ストレスを掛けて、持ち上げて「緊張」させる。」「下げる時は、ストレスを下げて「弛緩」させて緩める」こういう行為を環境適応の為の行為と言うのだと思うのです。それがウエイト・トレーニングだと思うのです。
    こうやってトレーニングして行くと、筋肉が発達してきて、筋肉が「進化」する。これをニュータイプとして定義づけても良いと思うのであります。ニュータイプ=新しい人類。ボディビルダーをある種、ニュータイプと捉えるのであります。

    家庭環境次第で人はニュータイプに成れるのでしょうね(^.^)ははは。

                                       山口 剛史。

    • 山口剛史さん
      コメントありがとうございます。
      レスが物凄く遅くなってすいません。。

      ニュータイプの考え方は、答えが無く色々な人が色々な解釈をして、いまだにああでもない。こうでもない。の議論が続いています。
      山口剛史さんが仰る内容も進化となるので、ニュータイプの考え方の一つだと思います。

      そんな色々な中で、ガンダムの世界でのニュータイプは、精神や脳構造の奇形と言う人もいるようです。
      進化と言っていますが、奇形とかからの突然変異に近い形態だと言う感じでしょうか。

      これは、宇宙に住む事になった人々が、太陽からの放射線などの影響に起因するものだとしています。
      さらに木星に関与する人達(シャリアブルやパフティマスシロッコなど)のニュータイプになっている率は高めの様です。

      もちろん地球育ちの人がニュータイプになっているパターンもありますが、そうなると奇形の一番要因がヘリウム3ではないか。との解釈もあります。

      これも一つの考え方です。
      ニュータイプの解釈は本当に千差万別です。
      答えが無いから議論が続く。
      今回の様なメッセージは、ガンダムの鮮度が保たれる重要な物だと思います。
      山口剛史さん。
      重要なイシューを提供頂き、ありがとうございます。

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    ガンダムは好きですが、宇宙世紀でないシリーズは詳しくありません。 シャアとアムロが織りなす世界観が好きなのです! 「塾長」と称していますが、ただの一年戦争ヲタク。 熊本県在住 普通のサラリーマン。 階級は伍長あたりで、もちろんオールドタイプであります。。