宇宙移民計画とは簡単に言うと、地球上の人口が増大し過ぎて地球環境が大幅に悪化した為、人類を地球から宇宙へ強制疎開させる計画です。
では、疎開するのは良いとしても、どこに疎開するのか?

月?火星?その他の天体なのカ?
宇宙移民計画では、宇宙空間に人工のシェルター「スペースコロニー」を建造し、その内壁を第二の大地として人々が安定的・恒久的に住まえる環境を整えます。
宇宙移民計画の目的とは?
- 宇宙空間にスペースコロニーを建設し、人が住める環境をつくる
- 完成したスペースコロニーへ引越しをする
- 地球の人口が減った分地球環境改善及び保全を行う
人類をスペースコロニーに定着させながら傷んだ地球を自然に帰し再生させる事が目的です。
宇宙移民計画が始まった頃、地球の各国は一つの連合統一国家「地球連邦」となっていて、地球連邦政府の決議の下、スペースコロニーの建造に着手し、完成した順番に少しずつ人民を移住させていきます。

スペースコロニー
直径6km、長さ40km程ある巨大な「筒」です。
回転遠心でその内壁に地球と同じ「1G」の環境を作り、人が生活しています。

宇宙移民者はスペースノイドと言われる事もありまス。
宇宙移民者への条件と判断
文化・宗教・人種・慣習……
それぞれが異なる約90億もの人口を宇宙へ移民させるので、もちろんそれは簡単な事ではありません。
宇宙空間への恐怖を抱く人や年齢、保守的な思想などを理由に移住を拒む者も多数いた筈です。
一方でスペースコロニーを建造するにも時間が必要で順番もあり、身辺や考えを整理してもらう時間を設ける事は可能であったのですが、早く移住を決めた人には住居や生活動線など好立地な条件を提示したり、仕事のあっせんや減免措置などの優遇を行ったりして、移民計画を促進していきます。
宇宙移民者達は、多かれ少なかれのストレスを抱える事を余儀なくされますが、時代の流れや地球環境の現実は理解していて、反発はあれど従順に方針に則り日々を過ごしていきました。
こうして混乱を携えながらも、宇宙移民計画は順調に進捗していきます。
宇宙移民計画の中止とその理由
宇宙移民計画が開始されて40年後、およそ35/90億人が宇宙へ移民した頃に地球環境は回復の兆しが見られ、計画の成果が出始めてきます。
一方の宇宙移民者達も生活環境と日常に慣れ、日々を過ごしていきました。
しかしそれから10年後、計画が始まって約50年が経ち地球の人口が20億人まで減った頃、地球連邦政府は突然、宇宙移民計画の中止を発表します。
人類共通の課題に対し順調な成果が見られる中、計画中止の説明は、
宇宙へ移住させるには莫大な費用も掛かり、また、政府運営と地球の環境管理をするに当たり20億人の残留は妥当である。
との判断から「移住させる対象者がいなくなった」という根拠薄弱な結論だったのですが、その時地球に残っていた人達は、
宇宙移民者達は一方的に突き付けられた結論と状況に、もちろん様々な感情が交錯します。
計画の中止に至った地球連邦政府の真意とは?
危機的状況から脱却し回復に向かう地球の環境は、宇宙移民計画の下、人類滅亡の危機感から人類総出で得られた努力の賜物です。
ただ、それを主導した地球連邦政府は半世紀も過ぎると世代交代を経て当時の意義や目的、危機感も薄れてしまい、計画のビジョンが不明瞭になっていきます。
この事で、費用対効果などの総合評価により地球連邦政府は事実上、宇宙移民計画を放棄したのです。

……無責任だナ。
この計画中止は、計画の最大の協力者(犠牲者)で、宇宙での生活を余儀なくされた宇宙移民者達の立場や将来を軽視する。
と同意であると言えます。
すでに断たれていた宇宙移民者の抗議の手段
宇宙移民計画の中止は、一般的に道徳や倫理、規範などに触る話ですが、計画中止に意を唱える人々は既に宇宙に移住していて、居心地の良い地球上の人々の間で計画中止に対する抗議や紛争が起こる事などあり得ません。
加えて、地球を守るという崇高な目的であった地球移民計画は、副産物として地球に住む人(アースノイド)と宇宙移民者(スペースノイド)との間に「宇宙空間と言う物理的な隔離環境」を作っています。
つまり、この2者間に内戦の様な直接的な抗議や紛争へ持ち込める環境すら無く、地球から遠く離れた閉鎖的環境のスペースコロニーに於いて、宇宙移民者達が起こせる抗議活動は圧倒的に制限されているのです。
義務と権利、弱者と強者
見方を変えれば、一般人を地球環境悪化を盾に宇宙への移住を「義務」として課し、政府重鎮や少数個人の利得が地球を独占できる「権利」を持つかの様な構図になっています。
その上スペースコロニーの自治権も制限され宇宙移民者達は明らかに「弱者」であり、一方で地球からあらゆる権限を行使する地球連邦政府は「強者」の立場をとっています。
このように、地球連邦政府は宇宙移民計画開始から50年の間に使命を見失い、宇宙移民者の自由を制限し、私欲に走ながら立場や権力で物を言う腐敗した組織へと変貌してしまいました。
蓄積する宇宙移民者の不満や疑念
宇宙移民者達は、あらゆるリスクを抱えながらも移住した上、スペースコロニーを建設し水や空気、食料まで作り出さなくてはならない(地球から多少の援助はあったが)環境に置かれながら抗議活動もままならず、自治権も制限されているこの状況は何なのだろうか??
地球連邦政府に対しこの様な不満や疑念が日々蓄積していきます。 つづく
要点・まとめ
- 宇宙にスペースコロニーをつくり、宇宙移民計画は開始された。
- 計画開始から50年後 宇宙移民計画は突然中断された。
- その時、宇宙と地球にそれぞれ住む人の身分の差別化が見られた。
- 地球連邦政府は計画の目的を見失って計画を放棄し、宇宙移民者は軽視され不満が蓄積していった。
多大な労力と時間が掛ってしまった宇宙移民計画。
その大きな負荷が当初の目的や信念を曲げ、計画倒れや目標喪失を引き起こしてしまいました。
しかし、それらは我々の日常にもありふれています。
政治家の意志や発言が変わるのもこの事と同じで、地球連邦政府の政治家達も例外無くそうなってしまったでしょう。
しかし、この事で少しずつ戦争への坂道を転がる事になるのですが。。
・・・つづく
終戦直前のジオン総人口が1憶5000万人(劇場版)。1サイドでこの規模だと、100億人の人口を移民させるのって本当にできるのかと言うツッコミが入ったようですね。wikiによると、オリジンではそれを逆手にとって、元々現実味の薄い政策を連邦が強行した様な描かれ方をしているようですが(すみません未見です)
流石にまずいと思ったのか、1つのサイドで10億人という設定も出て来たようですが、同じくwikiによると一年戦争前夜における地球圏の総人口は110憶人で55憶が宇宙移民。1stのナレーションによるとそのうち半数が戦争で死亡しているので、ざっくり見積もって一年戦争終戦時の地球生活者は23億人前後(乱暴な試算なのは承知してますw)。
逆シャアや閃ハサでマンハンターが活動している状況を見るに、連邦の棄民政策は(限られた富裕層を除き)ある程度は完遂されたのでしょう。移民が徹底されていないザル政策なら、取り締まってもきりがないし、ウッソたちもカサレリアにああも気を使って隠れ住む必要は無くなりますので。
そうなると、終戦からシャアの反乱までのわずか10年ちょっとで、20憶の人間を宇宙に送り込んだ事になります。
一年戦争で激減したとはいえ、戦後は新コロニーをろくに造っていない(シャアの演説)ようなので、戦争で人口が減ったコロニーに無理やり押し付けたのでしょう。ヨーロッパが無軌道に移民を受け入れて大混乱になりましたが、コロニー在住の半数近い人間を、連邦政府の強権で受け入れる羽目になったのです。それは反感に繋がって当然ですね。
一年戦争で死亡してコロニーのキャパが空いた所に押し込んだんでしょうから、おそらくインフラ的には問題ないでしょう。しかし、終戦後も人口は増え続けるでしょうし、文化ギャップや仕事や食料の奪い合いに格差問題。考えるだけでぞっとします。そのような前提に立つと、ガンダムではアースノイドとスペースノイドの対立が強調されてますが、スペースノイド同士の対立も凄そうです。
そう考えると、シャアや鉄仮面が言い出した「粛清」は、決して突飛な意見では無く、そう言った主張がまかり通る「土壌」は存在したのではないでしょうか?
尚、上記の意見はあくまで「そう言う視点もおもしろいかも」と言う話で、状況は参照する資料次第でがらりと変わると思いますが。
萩原裕さん
いつもコメントありがとうございます。
スペースノイドは月面都市に住んでる人たちも含まれるでしょうが、0080ではウラキが住民にボコボコにされていたので、月面都市の人々もアンチ地球連邦が多いのでしょうね。
同じスペースノイドでも、地元企業に働く人や、地球連邦に所属する公務員、ジオン軍に所属していた落人もいるのでしょう。
肌の色や人種、祖先の出身地、戦後にあとから放り込まれた弱者に値する人々。
もうカオスです。
文化、しきたり、習わし、宗教。
はっと思いつくだけならべても、スペースノイド同士が対立する土壌は十分でしょうねー。
衝突などして、色々な争いが起きて、結構な危機的状態になるとき、「連邦のせいだ!」と言って共通の敵を再確認。
そんな非生産的な理由で団結を生めたかもしれません。
それでも報われない人たちはニュータイプの存在を信じ(こうなれば宗教的です)、可能性を信じるしか無かったのでしょう。
仮にその団結を基にした連邦への「粛清」が成功したとしても、今度は共通の敵を無くしたカオス状態のスペースノイド達の主権争いが勃発。
それこそ一年戦争以上の大惨事になるかもしれません。
シャアたちが目指した理想の世界は物凄くハードルが高いものだったのかもしれませんね。
不安定なスペースコロニーに身を置いていたからこそどんな罰も怖くなくなった
国ぐるみでそれが起きたのがジオンなのではないだろうか?
スペースノイドは極大規模の無敵の人の集団となり得る。
THさん
コメントありがとうございます。
同一の胸中の人たちが、集団心理で罰をも恐れないと言うのはあり得るかもですね。
外から来た彗星が衝突する事だってあり得るだろうし、しょせん人工物の入れ物に入れられているに過ぎない。
いつ死ぬかわからない状況で、開き直った方が楽だったかもしれませんし。。
それが伝播し、ザビ家の統率があれば「ゲリラ国家」と言われる野蛮な集団が誕生した。というシナリオ