一年戦争末期、RX-78-2ガンダムは パイロットであるアムロ・レイのニュータイプ能力の覚醒によって、機体の反応速度が次第に遅れを取るようになってしまいました。
また テキサスコロニーで、シャアが駆るゲルググと対峙した時も、それが原因で劣勢を強いられてしまいます。
これは 移ろう戦局を見ても座視できない事象であり、ガンダムには急ぎ 性能の向上、特に駆動系のレスポンス向上が必要と判断されました。
そこで 地球連邦軍はその問題を解決すべく、新技術「マグネットコーティング」の導入を決定します。
機体の飛躍的なレスポンス向上を可能とした「マグネットコーティング」とは、どの様な技術なのでしょうか?
求められた機体レスポンス向上
一年戦争開戦後、地球連邦軍がV作戦によって完成させた無類の汎用機 RX-78-2ガンダムは、抜群の戦闘力を誇りました。
それを目の当たりにしたジオン公国軍は脅威と捉え、ガンダムに対抗すべく、ゲルググなどの新型機を開発し次々と実戦配備していきます。
ここでガンダムに課題として見えて来たものが、
- ジオンの新兵器と対峙し、性能の限界が見え始めてきた。
- アムロのニュータイプ覚醒による、機体反応速度 追随の遅れ。
これら問題を解決する目的と次世代モビルスーツの基礎技術の開発も含め、白羽の矢が立ったのが、
マグネットコーティング
と言う技術で、化学者モスク・ハン博士を中心とした当時の最新理論です。
しかし、その時は机上の研究段階で開発中であった為、実験や運用テストは皆無の状態でした。
マグネットコーティングの開発者
モスク・ハン博士だヨ
モスク・ハン博士の机上の理論をそのまま採用
現代において金属同士の摩擦は、グリスや潤滑オイル等を用いて軽減する事が可能です。
同じくモビルスーツも金属の塊であり、摩擦によって動くことに対しロスが発生します。
マグネットコーティングとは、簡単に言うと、磁石の同極同士の反発作用を利用し、金属と金属との摩擦を限りなくゼロに近づけるというものです。
リニアモーターカーの磁力反発と似た感じだナ
ブライト・ノアは本編で「関節に油を注すようなもの」と述べていて、非常に的を射た表現をしています。
単磁極素粒子「モノポール」
磁力反発といっても、磁石には対となるS極とN極があり、それらは「くっつく」作用があります。
反発作用に置き換える仕組みは、どういう風にするんだ?
こんな指摘をされそうです。
これを解決したのが、宇宙世紀に入って存在が実証された S極かN極かの単極しか持たない「モノポール」の存在です。
単磁極の素粒子をミノフスキー技術を応用して作り出す事が可能で、それを関節などの金属の摩擦が起こる部分に塗布して磁力反発を発生させるのです。
素粒子とハ、物質や場を形成する最小単位の粒子の事だヨ
目に見えない細かな「ツブ」の事だネ
これで理論的には、金属同士の「非接触」を作り出す事が出来ます。
モノポールを関節や駆動部分に塗布します。
現代でもモノポール理論は存在し、研究が続けられています。
モノポール 出典:Wikipedia
また、RX-78-2ガンダムの位置付けは「テスト・試作機」です。
もはや、ジオンに脅威を与える重要な戦力となってはいましたが、その本来の役割を全うすべく、ガンダムは一旦バラバラに分解され、マグネットコーティングが施されました。
マグネットコーティングの効果
一部では上手く行くのか不安視されたマグネットコーティングでしたが、改造は成功。
モスク・ハン博士の理論を基に、ほぼ計算通りの敏捷性を手に入れたRX-78-2ガンダムは、機体レスポンスがおよそ30%向上しました。
当時のジオン公国軍モビルスーツの主力であったゲルググを寄せ付けない戦闘力を確保する事に成功したのです。
RX-78-3
G-3ガンダムとも言われますが、マグネットコーティングを施されたRX-78-2のコードナンバー末尾を変更し「3」としたと言う設定もあります。
マグネットコーティングとの相性
マグネットコーティングを実用化させた地球連邦軍。
では、同じくジオン公国軍もゲルググ等の主力機にマグネットコーティングを施せば良いのではないか?
と 考てしまうところです。
しかし、そこには相性やマッチングの問題があるのです。
流体パルスシステムとの相性
ジオン公国軍が採用していた駆動方式「流体パルスシステム」は、駆動部位を流体による「圧」で動かしている為、レスポンス性能は油圧を押し出すシリンダーやアクチュエーターの能力に依存します。
この事から、金属抵抗に有効なマグネットコーティングの効果は、ほとんど望めません。
また、建設重機を基本とした構造なので、性能の向上にはある程度の限界があったようです。
フィールドモーターシステムとの相性
一方の連邦が採用したフィールドモーターシステムは、駆動部位が複数の金属で構成された関節と、フィールドモーターとが一体化した「駆動ユニット」になっています。
この為、レスポンス性能はモーターの能力と駆動ユニットの摩擦抵抗に依存します。
この事から、マグネットコーティングの効果を得やすい構造となっているのです。
駆動システム 相性のまとめ
上記を一言でまとめると、
- 流体パルスシステム(ジオン採用)= ×
- フィールドモーターシステム(連邦採用)= 〇
と言う事になります。
マグネットコーティングの普及
マグネットコーティングの実用化と相性の良さにより、突然強くなったガンダム。
加えて、量産配備されたGMの性能と汎用性を見て、ジオン公国軍も戦争末期に地球連邦軍が採用してるフィールドモーターシステムの機体を開発・配備します。
しかし戦争は終結に向かい、それら機体の活躍の場は殆どありませんでした。
ジオン公国軍が開発したアクトザク。
フィールドモーターシステムを採用しているので脚部の動力パイプなどが省略されています。
マグネットコーティングが施された機体
製造段階であらかじめマグネットコーティングを施された機体は、レスポンスをおよそ40%向上させることが可能で、一年戦争末期にRX-78NT1や、RX-78-4・RX-78-5などがロールアウトされました。
RX-78NT-1
ホワイトベース隊のアムロ・レイに供給される予定だったニュータイプ専用ガンダム。
通称:アレックス。
レスポンスの高さにニュータイプ以外での操縦は非常に困難な機体でした。
RX-78-4
ガンダム4号機とも呼ばれることもアリ、宇宙での運用に主眼を置き、高機動型に改良されたガンダムだヨ。
RX-78-5
RX-78-4と連携運用される前提で設計された、通称ガンダム5号機。
基本スペックはRX-78-4とほぼ同等で、武装が異なる試験機です。
標準仕様となったマグネットコーティング
さらに、一年戦争後は新しい機体構造が採用されます。
フィールドモーターによる駆動システムに、骨格構造を簡素・強化した「ムーバブル・フレーム」を導入。
- フィールドモーターシステム + ムーバブル・フレーム
この組み合わせの採用で、Zガンダムに代表される可変モビルスーツが実用化されていきます。
これに、変形する時間を短縮する為、マグネットコーティングを導入。
ウェイブライダーに変形するのに0.5秒。
マグネットコーティングの成せる技でス。
すなわち、
- フィールドモーターシステム + ムーバブル・フレーム + マグネットコーティング
と言う構成で、安定したレスポンスを獲得し、その完成度が高かった為、マグネットコーティングはモビルスーツ製造の標準仕様となっていきました。
その為、マグネットコーティングは特別な技術では無くなり、次第にその名称を耳にしなくなっていきます。
まとめ・考察
RX-78-2ガンダムは、フィールドモーターを用いた駆動システムを採用していた為、マグネットコーティングとの相性が良く、飛躍的な性能UPを実現する事ができました。
これを受けてジオンの主力駆動システムである流体パルスシステムは旧技術となり下がり、地球連邦軍はモビルスーツの駆動技術分野でジオンの先を行く事になりました。
これらを勘案し、ジオン公国軍のモビルスーツを総括してみると、
- 建設重機を基本とした駆動システム
- 既存武器をメインにした武装(ビーム兵器を保持していない事を指す)
開戦当初は圧倒的戦力として君臨していましたが、戦争末期には それらモビルスーツは試作品と言えるような技術レベルであり、完成度が低かったと解釈できます。
結果、一年戦争に敗れてしまったジオン。
ただ、もし戦争が長期化していたら展開が変わっていたかもしれません。
それは、ジオン公国軍は「サイコミュ・システム」の分野で先進的な技術を手に入れていたからです。
モビルスーツの駆動技術が仮に追いつけなかったとしても、コンペイトウ(旧ソロモン)で運用されたエルメスのように戦艦を何隻も気づかれない間に撃沈させている事実があります。
エルメスの周りを飛来しているのが無線で遠隔操作された移動砲台「ビット」だヨ。
- ジオンが称賛されるべきは、突飛した発想を基に技術開発を進めた事。
- 連邦が称賛されるべきは、そのジオンの発想を自軍が保有する基礎技術を基に飛躍させ完成形に高めた事。
これを象徴する技術の1つが、この「マグネットコーティング」であったかもしれませんね。
すいません。
以上 余談でした~。
[…] ガンダムのマグネットコーティングについてはこちらのサイトをご参照ください。 […]
kagoshimaniaXさん
リンクありがとうございます。
同じ九州同士。
これからも宜しくお願いします。
つまり常時磁力を発生し続けとるわけだから、微細な鉄粉を散布されると関節に自動的に入っていって詰まると・・・
匿名さん
コメントありがとうございます。
仰る通り、微細な鉄粉を散布されると関節に自動的に入って詰まるという話は理屈しとしてあっています。
しかし、その描写が見当たらないので、おそらく鉄粉が入らない施しはなされていたと思われます。
開発段階ではその様なトラブルなどあったかも知れませんね。
こんにちは。
この技術は未来の省電力?な対策なんでしょうかね。
理論的にはリニア技術と大差ないように感じます。
「油を差す」ようなものということで、
如何に摺動抵抗を減らすかってことなのでしょう。
関節の軸ははめ合い公差を厳格に管理するものですが、
逆に緩くして磁場で「宙に浮く」状態にしないと抵抗0に近づきません。
ということは地上では恐ろしく強い磁場が必要になりますよね。
特に脚の関節は自重を支えながら関節は反発して抵抗0にするのですから。
駆動に関しては狙った位置で止める制御が難しそうです。
もっとも抵抗によって駆動しているとも解釈できるので、
このタイムロスは如何ともし難いですが。
ニュータイプに対応するというより、
通常人にも必要な技術なのではないでしょうか。
車の操作の追従性にも通じる概念ですよね。
難問さん
いつもコメントありがとうございます。
自重を支える強力な磁場と、宙に浮いているものの惰性を止める術とは。
マグネットコーティングの理論を揺るがす問題ですね。
マグネットコーティングはジェガン辺りでは標準装備されていますので、通常人にも対応した技術になったと言う事ですかね。
そうなったならば、性能とコストが折り合ったと言う意味にもなりますので、先述した問題を解決したと言う事か。
ならば、この難しい問題を一体どのような理屈で説明するのか。
磁場ユニットがブレーキシューの様に稼働する事ができて、挟んで止めるとか、そんな事なのか?
もし、そうであったとした場合、摩耗が発生するので、厳しい公差は意味を成さなくなるし。
なんか、アイディアないかな。。