モビルスーツの立案・開発においてパイオニアであるジオン公国軍。
スペースコロニー建設に使用されていた建設重機の機構や仕組みを応用し、
- 流体パルスシステム
という駆動システムを用いてモビルスーツを駆動させました。
ジオン公国軍が採用した「流体パルスシステム」とは、どの様な構造なのでしょうか?
目次
流体パルスシステムとは?
流体パルスシステムとは、簡単に言うと人間の「心臓」と「血液」と「筋肉」の関係に似ています。
言葉の整理。流体とは?
流体とは、水や空気等を指します。
力を加えると容易に変形させる事が出来る物です。
人間の体の中で代表的な例で言えば、血液に該当します。
言葉の整理。パルスとは?
パルスとは脈拍とか、短時間に流れる電流や電波などを指します。
人間の体の中で代表的な例で言えば、心臓の動きに該当します。
流体パルスシステムの仕組み
ジオン公国軍製のモビルスーツは先ず、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉から出るエネルギーをパルスコンバーターと呼ばれる変流機を介して流体に変換します。
それらを動力パイプなどのチューブを通して各関節にあるアクチュエーターと呼ばれるパルスエネルギーを動力に変換する装置に送り、各関節を動かす仕組みになっています。
流体パルスシステムによるモビルスーツのひじ関節を動かすプロセス。
人間のひじ関節を動かすプロセスと似ていて、基本的に他の関節も同じ構造になっています。
上記の様に、流体パルスシステムの関節(駆動)部分の仕組みは、●で示している駆動支点とアクチュエーターが別々になっています。
これらをまとめると、
- パルスコンバーターが心臓の役割
- 動力パイプが血管
- アクチュエーターが筋肉
という構図になります。
構造が単純なので、ジオン公国軍のモビルスーツ開発はこの流体パルスシステムを採用していました。
流体パルスシステムのメリット
流体パルスシステムは上記の様に人間の構造に似ていて、比較的ベーシックな技術で構成されています。
これは、建設重機の仕組みの応用なので、メンテナンス性が追及された結果が引き継がれている為です。
また、各部がパーツ化されているので、故障した部分のみを交換するだけで元の性能を取り戻すことも出来ます。
経済力が乏しかったジオン公国軍にとっては、メンテナンス費を抑える事を考慮し 必然的に流体パルスシステムを採用する事となりました。
流体パルスシステムのデメリット
メリットの反面、逆のデメリットもあります。
流体パルスシステムは細部に至るメンテナンスを施せるので、比較的 簡単に分解ができます。
これが意味する事は、取付部品が多くなる事と作業部位に工具や手が入るスペースが確保される形になるので、重量の増大や動力パイプの露出、モビルスーツの体積が大きくなったりと俊敏性が求められる格闘戦や白兵戦に不利な面があります。
主力量産機での比較
ザクⅡ
56.2t
ジム
41.2t
その重量差、15t。
27%もの対比差があります。
最大のデメリット。マグネットコーティングとのマッチング
そして最大のデメリットは、マグネットコーティングが施せず機体レスポンス向上に限界がある点です。
金属抵抗を緩和する働きがあるマグネットコーティングは、流体に対しては性能を発揮できないのです。
しかしながら、戦争初期のモビルスーツ運用において十分な機動性を保有し、新兵器「モビルスーツ」として戦場での圧倒的脅威として君臨しました。
モビルスーツの原点である流体パルスシステム。
一年戦争以降は上記したデメリットを踏まえ、フィールドモーターシステムに主役を奪われてしまいます。
まとめ・考察
流体パルスシステムについて記述しました。
モビルスーツ開発においてパイオニアであったジオン公国軍は「無」の中から構造物を創造しようとはせず、既存技術を用いて新しい兵器の開発を進めていきました。
国力の少なさや、当時の手探り状態での開発においては正しい選択であったと思います。
一方の地球連邦軍は、ジオンに遅れてモビルスーツ開発に着手しますが、機体の駆動システムについては この「流体パルスシステム」を採用しませんでした。
ミノフスキー技術を集約した新技術「フィールドモーターシステム」を採用して開発を進めます。
戦争とは技術開発競争でもあります。
ジオン公国軍は心血注いで開発したザクの完成度が高かった事もあり、連邦が新技術フィールドモーターシステムを用いてガンダムを完成させた後も、しばらくは流体パルスシステムを採用し続けました。
しかし ガンダムの性能を目の当たりし、終戦間際にフィールドモーターを用いたモビルスーツを開発します。
終戦前にロールアウトしたアクトザク
フィールドモーターシステムを採用した事で、動力パイプ等が廃されています。
ただ、劣勢に立たされた状況の中、そのまま終戦を迎えてしましました。
ジオン公国は、ビーム兵器や駆動システムの開発について連邦との国力の差もあって後手にまわってしまい、技術応用の分野で地球連邦軍に追い抜かれてしまいました。
その大きな原因として、開発の先駆者・ミノフスキー博士が開戦前に、自らの技術が戦争に転用されてしまう事を危惧し、地球連邦に亡命してしまった事が挙げられます。
革新的な技術だからこそ、時代の重宝道具となってしまう。
技術者はどの、いつの時代も同じ宿命を辿るのでしょうか。
平和な世の中が続くことを祈ります。
すんません。
以上、余談でした~。。
簡単に言うと油圧シリンダーみたいなもんダナ。